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『労働者M』~わからないことの楽しさ(2ページ目)

2006年2月23日観劇。前売券はあっとう間に完売。人気上昇中の作・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏が、小泉今日子、堤真一など豪華キャストを迎えて送る話題作、『労働者M』を観劇しました。

執筆者:長谷川 あや


「分からないこと」も演劇の楽しみ

ふたつの物語が同時進行しながら、「それで、どうなるの?」と期待感高まる中、その期待をある意味、見事に裏切るラストシーンは印象的。びしっと結論を出す形ではなく、観る人に解釈を委ねるように終演を迎えます。「え、そこで終わりますか!」と、度肝を抜かれましたが、これがこの作品の特色なのでしょうね。

公演前、演劇誌のインタビューに、ケラ氏はこんな風に答えています。

ここ何年か「何が言いたかったの?」「分からない」と感じるお客さんとの闘いを続けているけれど、ダンスや現代美術を観て「分かんねぇよ」って言わない。なのに演劇になった途端分からないと不安になる。作品の印象なんて、観る人によって違うほうがいい。

「なるほど、で、そう来たか!」と膝を打たずにはいられない、まさにそういった作品でした。こういった観る人に解釈を委ねるような作品は楽しめる人もいれば、楽しめない人もいるでしょう。異性や食べ物の好みと同じです。

ガイドも演劇ファンのブログやレビューをのぞいてみました。それがおもしろいくらいに賛否両論なのです。絶賛する人もいれば、「なんじゃこりゃ?」という辛口意見もちらほら拝見。それが、今回、ケラ氏が目指したものなのでしょう。

ガイドの終演後の正直な感想は、「3時間半の観劇、大変、満足しました。あらもうこんな時間だわ(上演時間が上演時間ですもの!)。さあ帰りましょっと」と、あっさりしたものでした。だって日本語のおもしろさや実力のある俳優の演技を存分に堪能はしたけれど、別に涙が出るほど感動を味わったわけではないし──。

ただ、その帰路、電車の中で、こんなことを考えました。もしかして、この舞台で描かれていたふたつの世界は人生そのものなのかもしれない。人生に起こる出来事に「脈絡」なんてないし、何が「結論」であり、「クライマックス」であるのかもわからない。だからこそ、生きていくことっておもしろいんだよね、と。この作品に、人間の生きる縮図のようなものを見たような気がしました。少し大げさかしら?

正解などないのでしょう。それでいいのでは? 勝手にいろいろな解釈が楽しめるのも観劇の魅力なのですから。

【シアターコクーン/Bunkamura製作『労働者M』 公演情報】
Bunkamuraシアターコクーン 2006年2月5日~2月28日 計28ステージ)
Yahoo!地図情報
●作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
●企画・製作・主催:Bunkamura
●出演:堤真一/小泉今日子/松尾スズキ/秋山菜津子/犬山イヌコ/田中哲司 /明星真由美/貫地谷しほり/池田鉄洋/今奈良孝行/篠塚祥司/山崎一

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