そこへ「自分は義仲の忠臣だった樋口である、だからここは諦めて、駒若丸を返せ」と説得し、最後は「これも運命と諦めて自分の顔をたててくれ」と、涙まで流す。
そして権四郎は納得するのだ。また、権四郎が納得せざるをえない、納得するだけの樋口の心のこもった台詞なのである。権四郎は娘や孫を襲った不、恨みすら、全て目の前の樋口に託してしまったのかもしれない。
あるいは権四郎は、朝日将軍(木曽義仲)の第一の家臣を婿に持ち、まがりなりにも義仲の嫡子を育てていたということに、生きる望み、あるいは誇りを感じたのだろうか。そうとでも思わなければ、孫の死の意味はないと思ったのだろうか。