平安時代、菅原道真が九州・大宰府へ左遷されたという史実、さらに初演の年、大坂で当時珍しい三つ子が産まれ、そこに天神様(菅原道真)の奇跡の物語がドッキングした大河物語。それが『菅原伝授手習鑑』です。親子、兄弟、夫婦など、家族がテーマといえるでしょう。
中でもこの一幕は何度観ても泣けてきます。カタルシスっていうんでしょうか、激しく感情が揺すぶられ、その後気持ちがさわやかになっているんですね。親の子供殺しの話なのにスッキリしては申し訳ない気持ちになりますが。また、これは歌舞伎の特徴なのでしょう、どんなに悲しい場面でも、どんなに非情な場面でも、とにかく美しい。
最後には秀才とその母の園生の前を中央に、源蔵夫婦、松王夫婦が線対象の形となって美しく決まるので、最後には遠い昔のお話を絵画で鑑賞したかのような印象が眼の奥に焼きつけられるのがたまらないのです。
この『菅原』前半を貫く主人公が菅丞相、つまり菅原の道真、そして中盤が3兄弟の末っ子桜丸だとしたら、後半は松王丸です。 2へ続く。
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