歌舞伎/歌舞伎関連情報

十八代目勘三郎誕生!その2 プロデュース力にもますます期待(3ページ目)

江戸に歌舞伎の櫓を最初に掲げた初代中村勘三郎から400年。ついに十八代目が誕生した。代々座元(興行主)としての名前だった中村勘三郎を、一代で役者の名前としてビッグにしたのが先代の勘三郎だった。

執筆者:五十川 晶子

この巨大なケースに祝幕が納められている。


●パロディ精神が楽しい三島歌舞伎。

『鰯売恋曳網』
三島由紀夫作の新作歌舞伎。かつて先代の勘三郎と六代目歌右衛門のために書かれた作品だ。遊女・蛍火に逢いたいために大名に変装する鰯売り・猿源氏を、新・勘三郎が勤める。蛍火に玉三郎。「なぜこんなに美しい?玉三郎! その美しい蛍火がなぜしがない鰯売りに惚れるの?」と思いきや、愛嬌のなかににじみ出る勘三郎の色気に、蛍火を惚れさせる説得力があるのだ。

また、この作品はご存知のとおり、パロディ精神にも溢れている。猿源氏が禿から酒をひったくるので、禿(かむろ 清水大希)がひっくり返ってしまう。禿は憤慨して乱れた髪や衣裳を直す。従来歌舞伎で出てくる禿は、花魁にくっついて歩く程度のお人形さんのような存在なのだが、ここではその「無」に近いはずの禿が存在を主張する。また主役のセリフや行動に、周囲の人間がリアルに、ダイレクトに反応するのも、古典の歌舞伎にはないことだ。主役のセリフや所作の邪魔にならないように、周囲の役はじーっとして黙っているのが古典歌舞伎の常道だからだ。「一谷の合戦」を思わせるくだりなどもあり、どこまでもパロディ精神が顔を覗かせる。新作歌舞伎といえば現代なら野田歌舞伎。三島はその大先輩的存在だったのだ!?
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