歌舞伎/歌舞伎関連情報

十八代目勘三郎誕生!その2 プロデュース力にもますます期待(2ページ目)

江戸に歌舞伎の櫓を最初に掲げた初代中村勘三郎から400年。ついに十八代目が誕生した。代々座元(興行主)としての名前だった中村勘三郎を、一代で役者の名前としてビッグにしたのが先代の勘三郎だった。

執筆者:五十川 晶子

●舞台に重なる役者の素顔
さて3月4日、二日目夜の部を観た。
一夜にして劇場の雰囲気はがらりと変わり、かなり落ち着いた、いつもの歌舞伎座の雰囲気に戻っている。この日は演劇評論家の顔をずいぶん見かける。昨日のような異様な雰囲気も襲名披露ならではだが、じっくり観るには今夜の方が過ごしやすい。
ただ当日券を多数出しているのか、場内に入るとあちこちでラッシュアワー状態。すし詰めのまま前進しなくてはならず、少々危険を感じたのも事実。

もちろん勘三郎夫人も大忙し。


夜の部
『近江源氏先陣館 盛綱陣屋』(おうみげんじせんじんやかた もりつなじんや)
義太夫狂言の傑作中の傑作。
もともと、盛綱(勘三郎)の兄・高綱がこのドラマの重要人物であるにも関わらず、この段には登場しない。そのため複雑で分かりにくい面もある演目だ。盛綱が甥・小四郎の自害の真意を悟るその段階が盛綱の一番の見せ所だが、そのプロセスが手に取るように分かるのが面白い。

さらにいえば、新・勘三郎の岳父の芝翫、義弟・福助とその息子など、新・勘三郎のプライベートな親類関係が、そのまま盛綱をとりまく人間関係に重なってみえる。そのせいか、高綱がこの盛綱たちにとってどういう存在なのか、その具体像が妙にリアルに想像できたのも新鮮だった。これぞ歌舞伎を観る楽しみの一つでもある。

そして何より、芝翫の微妙(盛綱の母)に、富十郎の和田兵衛、我當の北条時政、幸四郎の信楽太郎に魁春の早瀬、福助の篝火という顔合わせで、一層ドラマが盛り上がる。義太夫狂言は顔合わせが立派だと本当に見映えがするものだとつくづく感じる。
そういえば中村屋は代々座元の家柄だった。新・勘三郎も平成中村座など名プロデューサーの一面を持つ。勘三郎のプロデュースで、本公演ではこれまであまりなかった顔合わせにも期待したい。

『保名』(やすな)
清元の舞踊劇。恋人を失って心も失った安倍の保名を仁左衛門が勤める。美しい菜の花畑が眼に沁みる。保名がきれいできれいで、恋人だった榊の前に嫉妬しそうなほど。
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