新・勘三郎にシンクロさせられる!
祝い幕が開くと役者がずらりと並ぶ口上。 |
さて、昼夜の襲名の狂言建てを紹介する。
昼の部
『猿若江戸の初櫓』(さるわかえどのはつやぐら)
座元としての歴史を持つ中村屋の歴史を物語るおめでたい舞踊。
『俊寛』(しゅんかん)
先代勘三郎の当り役の一つ。幸四郎が俊寛を勤める。浪布で舞台が覆われ、巨岩にへばりついた俊寛の咆哮に、気持ちが揺さぶれる。
二階ラウンジには記念の品々が展示される。 |
『口上』(こうじょう)
放映されたのでご覧になった方も多いだろうが、いくつか印象に残った口上を紹介する。
幸四郎「”哲明(のりあき)よくここまできたね。しかし、これからだよ”と十七代目が言っているような気がします」
左團次「ヤな爺でした(爆笑)。向こうも私のことを”気に入らねえガキだ”と思っていたことでしょう。でもいつのころからか、気に入っていただいた」
雀右衛門「女形の辛いところを救ってくださった。いつのまにか立派になって。驚きの驚きの驚きでございます」
富十郎「勘九郎さんはアメリカ三回目にして夢を現実にしました。平成の歌舞伎の発展に尽くしてほしい」
又五郎「りっぱになられて・・・。いろいろ申し上げたいのですが、うれし涙で・・・」
福助「こんなうれしいことはございません。古典も新作も、相手にはなにとぞ私を(笑)。勘太郎、七之助ともども、親戚の一員としてお許しをいただき・・・」
東蔵「中村屋との舞台はいつも楽しい。翌日の舞台がまた待ち遠しいような気持ちなんです」
玉三郎「お父様のこと、お母様のこと、そしてご子息のことなどいろいろ考えてみました。歌舞伎の古きも新しきもたくさん創って未来を創ってくれることを夢見ています」
仁左衛門「ただうれしい。胸が一杯でございます。ご子息、ご一門、どうぞよろしくお願いいたします」(客席にももらい泣きの様子が・・・)
勘太郎「列座させていただき、御礼申し上げます」
勘三郎「江戸猿若十八代目として、また今日から、はなから、一歩ずつ精進していきたい」
最近の口上の傾向なのだろうか、あるいは勘三郎の人柄のためなのか、決まりきった口上の言葉よりも、それぞれの役者が自分の言葉を選んで述べたという感の強い口上の舞台となった。
残念ながら、今月は次男・七之助は休演した。この口上の席に並びたかったことだろう。その想いはどのように口上で表現されるのか、それも実は知りたかった。そしてそれは、上記の通り、何人かの役者の口上を通して、さりげなくもしっかりとお客に伝わったことだろう。
『一條大蔵物語』(いちじょうおおくらものがたり)
作り(偽)阿呆となって源氏に味方する一条長成卿を勘三郎が勤める。阿呆なのに心底にはゆるぎないものがある。その背反するような立場を、勘三郎の存在が実に自然に吸収していたと思う。(ちなみに大河ドラマ『義経』では、蛭子能収が一條大蔵卿を演じている)