歌舞伎/歌舞伎関連情報

『本朝廿四孝』女形の大役に挑む 時蔵「動かないから難しい」(3ページ目)

毎年三月に上演される国立劇場の花形若手公演。今年は義太夫狂言の傑作『本朝廿四孝』だ。その中の八重垣姫役に挑む中村時蔵さんに、その「大変さ」と「面白さ」についてうかがった。

執筆者:五十川 晶子

●本性が変わると衣裳も変わる。

『奥庭』の段は、ケレンもあるし、それまでのじっとしていた体とか気持ちが発散されて、気持ちよく動けるんです。諏訪法性の兜を手にしたため、狐の霊力がのりうつる。湖水に映った自分が白い狐の姿に見えるわけです」

衣裳も引き抜いて白い着付けとなる。
「歌舞伎では意味もなく衣裳が変わることってないんですね(笑)。たいてい本心とか本性が顕れることを意味します」。

あんなに純情だったお姫様が、命を狙われた勝頼を追って、これまでからは想像もできない大胆な行動に出る。この転換が面白い。なんと立ち回りもするお姫様。
「さっきまで、袂すらもっているのも大変そうだったはずなのに(笑)。
その変わっていく様子が面白いですよね」

勝頼に今回は片岡愛之助、濡衣に片岡孝太郎。いずれも初役だ。
「義太夫狂言って、やはり役者の基本だと思います。これがしっかり身についていなければ、他の何をやっても薄くなる。特に女形は義太夫狂言をしっかりやっておけば、南北物も、黙阿弥作品も気持ちよくできるはず。もちろん新歌舞伎も。

だけど若手が中心になって古典をやる機会はどうしても少ないんです。だから本当にこういう公演は勉強になるはず。愛之助君もだんだんしっかりといい役者になってきて、元々線がそう太い方ではないけど、今回また勉強になるでしょう。孝太郎君もきっちりしたものを積み重ねておけば、後々財産になる。今回は(中村)芝翫のおじさんが監修で、僕ら自身よく知らない「勝頼切腹」の場など中心に監修してくださいますからね。一致団結していきたいです」
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