豪華な舞台に衣裳に、ケレン味もたっぷり。お姫様の情熱がほとばしる
毎年三月に上演される国立劇場の花形若手公演。今年は義太夫狂言の傑作『本朝廿四孝』(ほんちょうにじゅうしこう)だ。公演情報はココ。
戦国時代・川中島の決戦などで有名な、武田信玄と上杉謙信の争いを背景に、美濃の斉藤道三の企みを巡り、武田・上杉両家の子供たちが悲劇に直面する。
謙信の息女・八重垣姫(やえがきひめ)は、信玄の息子・武田勝頼の許婚。武田家では花造り簑作が勝頼の代わりに切腹し、本物の勝頼は武田家の重宝を取り返すため上杉家に、簑作のふりをして忍び込む。既に死んだと思った愛しい勝頼が目の前に現れて、八重垣姫の心は千々に乱れ・・・。
このうち「十種香」「奥庭」の段のみが上演されることが多いが、今回は34年ぶりにほぼ「通し」で、三幕四場が上演される。単独の段だけでは非常に分かりにくいドラマなのだが、通しで上演されることでとてもドラマチックで面白くなるはずだ。
また8日と15日は「社会人のための歌舞伎入門」というプログラムになっており、19時からスタート。「女形の魅力」という解説もつくので、社会人にはうれしい。
3月若手公演のチラシからも華やかな歌舞伎の時代物の舞台の雰囲気が伝わってくる。 |
●主人公は情熱的で純情なお姫様
『十種香』の段の八重垣姫は、本人にはまだ一度も会ったことのない許婚・武田勝頼の絵像の前で回向し香を焚く。だが腰元・濡衣と、勝頼そっくりな簑作のやりとりを見て、恋慕の情に身を焦がし、濡衣に仲を取り持ってもらう。
『奥庭』の段では、八重垣姫は武田家の重宝・諏訪法性の兜を手に、狐たちの霊力を借りて、勝頼を助けるために凍った諏訪湖を急ぎ追いかける。前段とは反対に行動的な恋するお姫様という設定なのだ。
この八重垣姫は、歌舞伎の古典作品の中でも「三姫」(さんひめ)と呼ばれる女形の大役。この大役に中村時蔵さんが10年ぶりに挑む。
八重垣姫が一目ぼれする簑作(実は勝頼)を片岡愛之助が、濡衣は片岡孝太郎が勤める。
中村時蔵さんに今回の見どころと八重垣姫の魅力についてうかがった。時蔵さんのプロフィールはココ。
時蔵さんは16歳のときに、勉強会(若い役者のための演技の勉強のための自主公演)で初めて八重垣姫を勤めた。その後京都・南座の本公演などで三度勤めているが、今回は10年ぶり。
そしてとかく「難しい」とされる八重垣姫という役。
その所以は?