いかがだろうか。これらみな、比較的よく上演される歌舞伎の演目のエッセンスだ。
思いつくまま並べてみただけだが、これだけでも随分とバラエティ豊かだと思いませんか。江戸時代のお話だから「リアリティないんじゃない?」と思っていた人も、実は「意外にそんなこともないかも」と認識を新たにしていないだろうか。
それがお芝居というものさ」というような明らかに都合のよい幕切れもあるし、現代では考えられない状況設定なのに、主人公の気持ちを考えると涙が止まらなくって、というものも。また思わず生ツバごくりとやってしまうような色っぽーいお話や、夢心地のようなファンタジックな世界もたくさんある。
僭越ながら筆者も、歌舞伎を見始めたころは、役者の顔と名前が一致しなくて困ったが、ドラマは観ていればなんとなく分かる。筋書きを読めば少なくとも構造は分かる。だから、この不思議で豊かな物語を持つエンタテインメントにいきなりメロメロになってしまった。
「伝統芸能」という枠組みをはずして、江戸から400年かけて洗練に洗練を重ねてきた、歌舞伎のドラマをじっくりと楽しんでみませんか。
そして歌舞伎のドラマをじっくり楽しむなら、やはり「通し狂言」(全幕を通して)で上演している興行がお勧め。
●国立劇場 3月4日~26日
『加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)』
出演 中村翫雀、中村扇雀、市川亀治郎 他
国立劇場は2月よりインターネットでもチケット予約できるようになったのが便利。
予約電話番号 03-3230-3000
●歌舞伎座 3月2日~26日
『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』
通し狂言ではないが、ほぼ全容が楽しめる。
出演 片岡仁左衛門 松本幸四郎 尾上菊五郎 他
歌舞伎座 予約電話番号 03-5565-6000
よかったら、ココも覗いてみてください。
また、ストーリーをしっかり頭に入れるには、やはり台本を前もって読んでおくのが早道だ! ストーリーも、役名も、頭に入っていると、役柄や人間関係が分かりやすいし、舞台を見るときに役者に集中できるのもうれしい。ちょっと手間かもしれないけど、歌舞伎が2倍いや、3倍面白くなることうけあいだ。
おすすめは
白水社 『歌舞伎オン・ステージ』シリーズなど。現在上演されているほとんどの演目を網羅している。言葉の解説や芸談も豊富で使いやすい。
またてっとり早く各演目のダイジェストを知りたいなら、
講談社 『歌舞伎手帖』(渡辺保著)もコンパクトでとっても便利。
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