歌舞伎/歌舞伎関連情報

竹本葵太夫さんインタビュー1(2ページ目)

歌舞伎といえば役者!についつい注目しがちだが、舞台の上手(向かって右)目をやると、おっとこんなステキな「語り手」が。今回は竹本葵太夫さんにインタビュー。

執筆者:五十川 晶子

出の前に床本に思いを込める
「クドキのところなど、こちらの音楽的なリードに乗って俳優さんが型をあてはめていくようなときとか、義太夫を聴いてしぐさをはめていくような場面とか、そういうときは、自分も舞台を多少はコントロールしていると思えることもありますね。また、俳優さんも生身ですから、毎日同じようにはいかないこともあります。段を上る時つまづいてしまったり、段取りが違ったり。そういうときは”見計らい”といって、伸ばしたり縮めたりして舞台に穴があかないようにします。でも、俳優さんの演出意図と、自分がやりたいことがマッチしたようなときが本当にうれしいですね」。

また狂言によっては役者によって演出がかなり変わる事もある。
たとえば『石切梶原』には、播磨屋型、橘屋型、成駒屋型など数種の演出があり、その型ごとに床本(ゆかほん)という太夫の語る詞章や表現のための指定が書いてある本を作り直すという。
その床本を実際に見せてもらうと、表紙には外題や●●屋という主演役者の屋号が書かれており、中には葵太夫さん自身の自筆で浄瑠璃が書かれている。和紙を袋折して閉じた独特の形式の本。内容に変更のあるところには紙が貼ってあり、さらに最後のページには上演記録の覚書のようなものまで、端正な筆でびっしり書き込まれている。
葵太夫さんは幕が開く前に、この床本を押し頂き、この曲の作者と、そしてそれを伝えてきた先輩方を敬う気持ちを込めるという。



(インタビュー記事2へ続く)
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