会見は緊張の雰囲気で始まった。
松竹永山会長は、
「戦後を支えた名優達が次々に亡くなった。歌舞伎は名前を継続させていかなくてはならない。と同時に、追善をしていく。この2つが非常に大事だと入社以来教わってきた」と語り、三津五郎、松緑、魁春という襲名興行に触れ、「今年はNHKの大河ドラマも経験して勉強をし、年齢も26歳、来年5月というのが襲名に非常によい時期であると考えている」と述べた。
さて、次に父である12代目市川團十郎が挨拶。
「このたび、11代目」と言いかけて「市川團十郎を襲名する」と言ってしまった成田屋に会場はドッと笑いの渦。緊張がホッと解け、新之助も松竹幹部もなごやかな雰囲気に。さすがパパ!
「では、なくてですね、海老蔵です。團十郎だったら大変ですね。そうしたら私はいったいどうなるんだ?」
ますます会場爆笑である。いやー、素敵です。
成田屋! と声はなかったが、できすぎなくらいのタイミング。愛敬たっぷりの成田屋。衆人愛敬。役者はやっぱり愛敬です。
・・・話がそれました。
当の新之助は神妙な面持で、
「今日はじいちゃん(11代目團十郎)の命日でした。だから一人で報告に行きました。海老蔵になるけどいいですか? と言ったけど、何も言ってくださいません」。 (そりゃそうだよな)とは思ったが、それでも問いかけずにはおれなかったのだろうなと思わせる新之助の強い口調に、実は筆者ひそかにジーンとしてしまった。
新之助という名前については、
「7歳から18年間新之助という名前だったので、このままでもいいかなあと思いますが、憧れでもある祖父と父が名乗った名。名前に負けない役者になりたい。後は11代目海老蔵という名前を僕がどうするのか。この際、一気に行くぞ!と思っています」
と、太く低く通る強い声できっぱりと言ってのけた。