歌舞伎/歌舞伎関連情報

「舞台は生物。終わるまで息つけず」 舞台裏を支えるお弟子さん達

今月歌舞伎座夜の部『本朝二十四孝』で大活躍している京屋一門の皆さんの奮闘振りについてインタビューしました。

執筆者:五十川 晶子

文章:五十川 晶子(All About「歌舞伎」旧ガイド)
●11月の歌舞伎座は顔見世らしく、役者も演目も揃い、昼も夜も重厚な舞台を堪能できた。夜の部は三代目中村雀右衛門七十五年祭追善狂言ということで、『本朝二十四孝(ほんちょうにじゅうしこう)』の「十種香(じゅっしゅこう)」と「奥庭(おくにわ)」が上演された。ご存知のとおり、この演目は義太夫狂言で、明和三年(1766)竹本座で初演された人形浄瑠璃が基となっている。
「十種香」では歌舞伎の三姫という大役である八重垣姫を中村雀右衛門(なかむらじゃくえもん・京屋)さんが演じる。長尾謙信の娘・八重垣姫は武田信玄の息子・勝頼の許婚。勝頼が死んだときいて姫が十種香を焚いている場面から始まる。

次の「奥庭」は、諏訪明神の使いである狐が姫にとりつくという趣向で、雀右衛門型とされる人形振りが今月の大きな見所の一つだ。人形振りを中村芝雀(しばじゃく)さんが、人形遣いを兄の大谷友右衛門(おおたにともえもん・明石屋)さんが演じる。普通の人間の姫だったのが、ある瞬間から人形のような動き方となる。そしてつき物のついたそれのように、宙を舞う。いかにも勝頼を愛するあまり、尋常な状態ではなくなった姫の、勝頼逢いたさで羽を生やして飛んで行きたいという気持ちそのものを実感させる面白い演出だ。初めて観る人でもこの幕は楽しく観られるのではないだろうか。

この「奥庭」の幕の八重垣姫は、芝雀さんにとっては初めての役、初めての宙乗り。それも前の幕の「十種香」で八重垣姫を演じる父・雀右衛門さんの後を受けて演じなければならない大変な幕。初めて尽くし11月である。
芝雀さん奮闘するその後ろでは京屋一門の中村京妙(きょうたえ)さん、CMの「勘定奉行」でもおなじみの京蔵(きょうぞう)さん、京紫(きょうし)さん、京三郎(きょうざぶろう)さんが大活躍。さらに京妙さんは、片岡孝太郎(かたおかたかたろう・松嶋屋)さんの急病で、昼の部に代役が廻ってきたため、眼の廻るような忙しさだ。
客からすれば、狐の人形が出てきたり、姫が水面に顔を映すと狐が映っていたり、さらには人形振りや宙乗りと、見所たくさんのこの「奥庭」。その裏ではお弟子さん達が息をつめて、ときには冷や汗を流しながら、後見で活躍しているのだ。
京蔵さん、京紫さん、京三郎さんに、その「面白さ」「大変さ」を聞いた。(中村京妙さんは出演準備のため欠席)


写真は左から京三郎さん、京紫さん、京蔵さん。
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