いまさらながら、千秋楽で、市川新之助、尾上辰之助、尾上菊之助を拝んでまいりました。辰之助は来年尾上松緑を襲名することもあり、“三之助”としての顔合わせはこれがほとんど最後かもしれません。
千秋楽ということもあり、人気の三人の顔合わせということもあり、ロビーは一段と華やかな雰囲気です。特に着物姿の若い女性が多く目に付きました。そしてそのひとりは、なんと辰之助夫人! 楚々として和装の似合う“梨園の妻”という雰囲気十分でした。年輩の女性にあれこれ耳打ちされている様子で、おそらくいろいろな“しきたり”“挨拶すべき人々”に関する情報を入力している最中だったのでしょう。
そして、筆者は寡聞にして名前まではわからないのですが、間違いなく宝塚の俳優さんがニ人連れで観劇していました。ロビーに出ると頭ひとつ背が高く、スラッとしており雰囲気がやはりどこか普通の観客と違うのですぐわかります。辰之助夫人に挨拶していたようなので、辰之助ファンの俳優さんたちなのでしょうね。(後日、「宝塚ファン」のガイドの桜木星子さんから、「辰之助夫人は元タカラジェンヌ」と教えていただきました。ありがとうございました桜木さん!)
もちろん楽しいのはロビーだけじゃない。『鳴神』はかなり興奮ものでした。なにしろ新之助の声がえらく通るし迫力万点です。鳴神上人という、神様に仕える、聖職の身にありながらも、人間くさい、男くささもぷんぷん漂う。それでいてその人間くささを正直に出してしまうあたりの素直さや若若しさ。新之助の力強さと若さが、荒事特有の幼さの混じる荒荒しさにぴったりでした。