『鏡山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)』は、女性ばかりの職場を舞台とした人気演目のひとつだ。

入間家の息女・大姫付きの局・岩藤(いわふじ)と、中老・尾上(おのえ)の二人の女性の争いと、尾上の召使・お初の活躍が見物の演目だ。婚約者を失って哀しみに沈む大姫は、菩提を弔うための「朝日の弥陀の尊像」を尾上に預けるが、それを岩藤はねたむ。尾上は元々町人出身なので、武芸の腕前を試そうと試合をしかける。尾上の代わりに武家出身のお初が岩藤をやりこめる。だが、さらに尾上は岩藤の恨みを買い、尾上が盗みを働いたように見せかけられる。ついには草履で頭を打たれ侮辱された尾上は……。そして仇を討つためお初は……。

岩藤は立役(たちやく。男性の役)が演じることも多く、大柄ならなお憎々しさが倍増。尾上の儚げな、頼りなさげな役柄、お初のきりりっとした可愛らしさ、と、非常にキャラが分かりやすい。いつの世も上司の贔屓は争いの基。岩藤は「御局様」の元祖である。

この物語はもともと江戸中期に人形浄瑠璃に書かれたものだが、後に鶴屋南北、さらに黙阿弥によりパロディが作られた。名づけて『加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)』。前編でお初に刺された岩藤の骸骨が登場し、岩藤の宙乗りもある。お初は尾上の死後、二代目尾上を名乗っているが、こうなると逆に岩藤にも同情してしまう。

尾上に「あなたがしっかりしないのがいけなかったんじゃないの?」と、筆者などは毎度ツッこみたくなるのだが。この尾上の儚さ、いかがなものか。こういうタイプ、いつの世でもいるのは確かである。観ていると筆者など、つい岩藤に肩入れしたくなるのだ(いじめの素質あり?)。

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