「モンティパイソン」との出会い
『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル デラックス・コレクターズ・エディション』(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント) 広川さん最後の仕事が、このDVDでの新たな吹き込みだったそうです |
イギリスのコメディチームが制作出演を兼ねた伝説の番組「モンティ・パイソン」。日本では、76年にテレビ東京(当時は、東京12チャンネル)系列で放送されました。イギリス風俗にかかわるコントが多く、そのまま訳せば日本人には意味不明なところを、大爆笑できる作品に仕上げたのは、広川太一郎をはじめ、山田康雄、納谷悟朗、青野武、飯塚昭三、古川登志夫といった実力派声優陣のアドリブと台詞回しによるものでした。
その吹き替え版は放送終了とともに処分され、つい最近まで、二度と聞けないものと言われてきましたが、先ごろ当時の吹き替えを収録したDVD-BOXがリリースされ、ファンを狂喜乱舞させました。このリリースから約2週間後に、広川さんが帰らぬ人となったのは、渾身の作品が再び世に出たことを確認して旅立ったかのように思えてなりません。
ほとんどオリジナル?『Mr.BOO!』
81年には、もう一つの代表シリーズといえる『Mr.BOO!』が、フジテレビのゴールデン洋画劇場で放映されています。主演のBOOことマイケル・ホイの声を吹き替えた広川さんは「このまま演じたら、絶対に面白くない」と判断。自ら台詞を大幅に書き換えます。いま考えると、それは台詞の内容うんぬんではなく、テンポの問題だったようにも思えます。当時の吹き替えについて広川さんは「スクリーンの役者が黙っていても、口の動きが見えない場面では、たっぷり台詞を書き加えた」と語っています。ただ「Mr.BOO!」シリーズの場合、マイケル・ホイがはっきり口を閉じているても、平気で広川さんのマシンガントークが錯節していました(笑)。テンポアップのためには、多少のムチャも仕方ないと考えたのかも。
ロードショーの際にも、香港映画の中で初めて広東語バージョン(それまでは全部英語)で上映し、話題になった『Mr.BOO!』でしたが、テレビ放映はそれに輪を掛けた人気で、以降、シリーズ作品がコンスタントにゴールデン洋画劇場枠で放映され、そのすべてを広川さんが吹き替えたのでした。
次のページでも、まだまだ語ります。