そして、ともすれば大怪我をするかもしれないのが、転んだり、大階段から落ちることでしょう。だいたいそんな時、生徒さんは恥ずかしさでニヤっと微笑んでしまったりしますが、本当はすご~く痛いはず。お客さんもヒヤッとするでしょ? 無いに越したことはありません。
小道具を使う場合のハプニング。これはかなりありますよね? 帽子、ステッキ、舞扇、羽根扇、剣、グラス……。こういった小道具を落とすと、お客さんに「あっ! あの人、落としたっ!」とハッキリわかってしまうところがツライです。
芝居の際に落とした場合は“これも芝居の一つ”として、冷静に芝居をしながら拾うこともできますが、“ダンスの中の決められた振り付け”だと、かなり苦しい。
帽子なんかを“上に投げて受けるはずが取れなかった”とか“違う方向に投げてしまった”とか。
タイミングが合わなかったという時もありますが、踊っていると、手にじっとり汗もかきます。だからすべってしまうこともよくあります。
また、衣装に引っ掛かってしまったり、何かにぶつかって落としてしまったり。
平場で小道具を落としてしまった場合、これはまだ拾える可能性がありますが、大階段で落とすとちょっと悲惨。下に転がってしまえば取れない!
ちなみにシャンシャンは、裏側にぎゅっと握れる取っ手が付いているので、滅多に落とすことはありませんが。
さて――私が現役時代のお話。ショーのある場面で、男役さんが傘を上に高く投げ、宙でふわ~っと一回転させてまた手に取る……という振りがありました。これを数名の男役さんが順番にやってゆくのです。その傘が結構軽い傘で、だから違う方向に飛んでゆきそうになるのです。
一度落とすとその衝撃で、傘の柄が曲がっちゃったりして…。余計、きれいに回転しにくくなり、次の公演がもっと怖くなるわけです。その場面に出ていた男役さんたちは「あぁ……怖い……」と千秋楽まで緊張し、私たち娘役は舞台上でも相手役の隣で「絶対、落ちない!」と、念力?をかけていたものでした。