絵本/絵本関連情報

なぜかノスタルジー感じる夏休みの絵本(3ページ目)

残暑厳しい中ですが、まだまだ続くぼくとわたしの夏休み。山で川で過ごす、格別な夏を描いた絵本をご紹介します。

執筆者:鈴木 宏枝

池の中と池の外がつながる『なつのいけ』

暑い夏の午後、二人の子どもが網を持って池をのぞいています。アメンボ、アメリカザリガニ、オオナマズ。男の子が網ですくったのは小さなメダカでした。

なつの いけには こどもたち。いけの うえには かぜの くも ひとつ。トンボの めだまは なつの いろ。

じりじりとした日差しも感じられるような子どもの夏休みの一日です。池の内と外とを自在に視点が行き来するところが絶妙のおもしろさでしょう。池の中の生き物は、裏表紙でも紹介されています。ゲンゴロウやタナゴ、ヤゴやヨシノボリなど、様々ですね。捕る側の子どもたちのわくわくと、そんな子どもたちと共生しつつ池の中でバランスよく暮らそうとする生き物の様子がどちらも魅力的で、「ただいま」と池に戻ってくるメダカの笑顔にほっとし、弱いものいじめをするザリガニを一喝するナマズはなんとも頼もしげです。

同じペアによる『なつペンギン』は暑い都会の夏にまぎれこんだペンギンのお話です。涼しい北にいたかろうに……と少し切ない気持ちになります。

■『なつのいけ』
文:塩野米松
絵:村上康成
出版社:ひかりのくに
価格:¥1,260
発行:2002.7

河童との出会い『おっきょちゃんとかっぱ』

おっきょちゃん(きよちゃん)は、おかっぱ頭の愛らしい女の子です。ある日、足を川の流れにつけてちゃぷちゃぷ遊んでいると、水の中から赤い河童の子が顔を出します。

おいら、ガータロ。おまつりなのに だれも あそびにこんから、おまえ、おきゃくさんになれや

浴衣に着替え、庭先の畑から河童の大好物の太ったきゅうりを何本ももぎ、おっきょちゃんはガータロと一緒に水の中の世界に入っていきます。河童は「内臓」を意味する尻小玉を抜くといわれますが、きゅうり持参のおっきょちゃんにはそんな悪いことはしません。もてなされ、遊んでいるうちにおっきょちゃんは水の中の世界のものを飲み食いしたことで、人間世界のことを忘れ、河童の子になってしまいます。

おっきょちゃんは人間の子どもに戻れるでしょうか。「ちえのすいこさま」が教えてくれた方法で、ガータロも一緒にがんばってくれます。人間界に生まれなおしていくプロセスはなんともユニークで説得力があります。井戸の中のスイカ。下から見るとこんな感じ……ということで、向こうとこちらの端境を「越える」感覚が、水の中らしいひんやりをした気持ちよさと共に描かれています。赤い河童のガータロも、布人形の好きな小さなおっきょちゃんも、親しみのもてる子どもたちです。夏ならではの異界体験ですね。

■『おっきょちゃんとかっぱ』
文:長谷川摂子
絵:降矢奈々
出版社:福音館書店
価格:¥840
発行:1994.9



いかがでしたか?過ぎてみればきっと短い夏。絵本の世界でも、今が盛りの夏を楽しんでみてくださいね!

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