絵本/絵本関連情報

なぜかノスタルジー感じる夏休みの絵本(2ページ目)

残暑厳しい中ですが、まだまだ続くぼくとわたしの夏休み。山で川で過ごす、格別な夏を描いた絵本をご紹介します。

執筆者:鈴木 宏枝

田舎で過ごす最高の夏休み『まほうの夏』

学校での短時間のプールと家でのゲームばかりの夏休み。「ぼく」と弟はおじさんからの葉書をもらい、お母さんの里である田舎に飛行機に乗って遊びに行くことになります。

イヤッホー! ぼくたちの夏休みのはじまりだ。

小川の奥の森で虫捕り、木登り、川遊び。どろどろになって家に帰ると、おじさんとおばあちゃんはあったかいお風呂を用意して待っていてくれます。海では水中眼鏡をかけて小さな魚をたくさん見つけ、磯釣りの名人になります。

多分にすばらしき子ども時代の夏休みへの希望・願望がこめられています。誇らしげな兄弟の顔も、都会から来た子を仲間に入れて遊んでくれる地域の子たちの描き方も、本当に理想的です。一種のノスタルジーかもしれませんが、こういう夏を経験したことで蓄えられる力ってあるだろうなあとしみじみ思います。ガイドのお気に入りは見開きの夕焼けの海のページ。この赤さに、少年たちは何を思ったでしょう。

同じくはたこうしろうさん作・絵の『なつのいちにち』もおすすめです。クワガタムシを一人で捕りに行く少年の1日を描く絵本で、絵のアングルの変化は臨場感満点です。

■『まほうの夏』
作:藤原一枝・はたこうしろう
絵:はたこうしろう
出版社:岩崎書店
価格:¥1,365
発行:2002.5

自由研究で作り出した文明『ウエズレーの国』

ウエズレーはピザもコーラもサッカーも嫌いで、町の男の子の中で浮いた存在です。嫌がらせをされてもめげないのは、彼の心に自由な空想が溢れているから。夏休みの宿題に出た自由研究に、すごいことを思いつきます。

じぶんだけの作物をそだてて、じぶんだけの文明をつくるんだ!すごい自由研究になりそうだ。

ウエズレーが作り出した文明はすごいです。庭の畑を耕すと、彼の願いに呼応するかのように不思議な金色の風が種子を運び、珍しい新しい作物ができます。その実を食べ、皮で道具を作り、繊維で服を織り、やがて「労働」と「貨幣」、時計に文字に娯楽まで生まれ、ウエズランディア(ウエズレーの国)になるのです。

自分の思うところを信じる子どもへの福音の夏です。夏休みの間にできあがった一大文明の見事さと、ウエズレーという少年の芯の強さの両方に感服し、自分もこんな風に国をつくってみたいとしみじみ思います。自分だけの家、自分だけの庭。子どもにはそういうスペースが必要なのでしょう。なんともいえない幸福な物語です。

■『ウエズレーの国』
作:ポール・フライシュマン
絵:ケビン・ホークス
訳:千葉茂樹
出版社:あすなろ書房
価格:¥1,365
発行:1999/1999.6

>>次のページは もうひとつの世界との出会い『なつのいけ』『おっきょちゃんとかっぱ』
『まほうの夏』
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『ウエズレーの国』
ここで購入!いつもみんなから浮いている少年ウエズレーは、夏休みの自由研究にみずからの手で文明をつくりあげます。
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