友達を大切にする絵本をご紹介
<目次>
ジュラ紀に響く恐竜の声『だくちる だくちる―はじめてのうた』
ここで購入!『だくちる だくちる―はじめてのうた』ジュラ紀の恐竜たちがかわした鳴き声は、初めて仲間を得た喜びの声でした。 |
ロシアの考古学者の詩を、童謡作家でもある阪田寛夫さんが文にし、長新太さんの絵がついて、すばらしい絵本になりました。時はジュラ紀、人間が生まれるずっとずっと前に生まれた「ともだち」の初めての歌です。イグアノドンが喜ぶ見開きページは、背後で噴火する火山のダイナミックさと連動して、まさに太古の喜びの迫力があります。なんだか涙が出そうなくらい遠い昔の、はじめての「ともだち」です。「だくちる だくちる」の歌を、仲間への共感として感じ取った、自分は物言わぬイグアノドンの心が伝わってきます。
■『だくちる だくちる―はじめてのうた』
原案:V・ベレストフ
文:阪田寛夫
絵:長新太
出版社:福音館書店
発行日:1993年11月
お日さまが見守る『わたしとあそんで』
ここで購入!『わたしとあそんで』野原に出た「わたし」。静かに水を見ていると動物たちが寄ってきます。 |
「わたしが そのまま おとを たてずに じっとしていると、だあれも だあれも もう こわがってにげたりは しませんでした」
ここにはぐくまれる友だち関係には、ズカズカと相手の領分に入っていって、「友だちになろうよ」と言うようなずうずうしさはありません。仲間を得てとびきりうれしくなった「わたし」の幸せそうな表情と、そのまわりにいる動物たちの醸しだす、友達になりたて同士のぎこちない、けれど気持ちのいい空間が、この絵本の普遍性を物語っています。くすぐったいような「わたし」の表情は最高ですね。最初のページからずっと見守る太陽も素敵です。
■『わたしとあそんで』
作:マリー・ホール・エッツ
訳:よだじゅんいち
出版社:福音館書店
発行日:1955/1968年8月
笑顔がこぼれる『だるまちゃんとてんぐちゃん』
ここで購入!『だるまちゃんとてんぐちゃん』 大の仲良しのだるまちゃんとてんぐちゃん。だるまちゃんは、てんぐちゃんのうちわや高下駄がうらやましくてしかたありません。 |
だるまちゃんとてんぐちゃんの満面の笑みに魅せられます。だるまどんも、等身大の父親として好感が持てます。こわもてだけど、子ども思い。最後にお餅で長い鼻を作ってあげたことで、面目躍如でよかったですね。だるまちゃんもてんぐちゃんと同じアイテムを手に入れ、ますます仲良しになります。素直に友だちを立てるてんぐちゃんは、いい子ですね。
■『だるまちゃんとてんぐちゃん』
作:加古里子
出版社:福音館書店
発行日:1967年11月
嫌い嫌いも、好きのうち!?『きみなんかだいきらいさ』
ここで購入!『きみなんかだいきらいさ』「ぼく」はジェームズと親友なのですが、今日は、ジェームズのやることなすこと気に入りません。 |
ラストの片方ずつのローラースケートと、ぶきっちょに半分ずつされたクッキーの「雑」な感じが、最初の絵のどこかおすましした友情に比べてぐっと男の子らしく、本物らしく思えます。
■『きみなんかだいきらいさ』
文:ジャニス・メイ・ユードリー
絵:モーリス・センダック
訳:こだまともこ
出版社:冨山房
発行日:1961/1975年5月
健気なこんに涙……『こんとあき』
ここで購入!『こんとあき』きつねのぬいぐるみのこんは、あきが生まれたときからあきの一番の仲良しです。 |
こんには、おばあちゃんの心も込められているように思います。ぬいぐるみとしてのこんと、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と言い続けて、あきの保護者であろうとするこんの重なりが巧みです。あきを守ろうとするこんと、こんを背負うあきとの深い絆は、涙を誘うほど健気。でも、しんみり進んだあとは、ほっこり! おばあちゃんの手にかかって元気になったこんが逃げ出すところでストーリーにリズムが生まれ、幸せな気持ちで本を閉じることができます。
■『こんとあき』
作:林明子
出版社:福音館書店
発行日:1989年6月
勇気を教えてくれたライオン『ラチとらいおん』
ここで購入!『ラチとらいおん』弱虫を克服したいラチのところへ、絵の中から勇敢なライオンが飛び出してきます。 |
ラチが、どれほどらいおんから力を得て、「もうなにもこわがらない」ラチになったか。のほほんとしたらいおんの最後の表情もとても印象深いです。らいおんにはどんな精神性が込められていたのでしょう?強くなって飛行士になりたいラチが、強いライオンの絵から赤いらいおんを引き寄せたのでしょうか。ラチの求めに応じて実体化したらいおん。ラチを叱咤激励し、鍛えてくれるらいおんの心意気にジーンとなりますし、涙ではなく爽やかに「じゃ さよなら」と去っていくらいおんは、なんともかっこよいです。
皆さんにも、自分だけのらいおんがいるのではないでしょうか。
■『ラチとらいおん』
作:マレーク・ベロニカ
訳:とくながやすもと
出版社:福音館書店
発行日:1961/1965年7月
美しい夜の詩情『ぼくのともだちおつきさま』
ここで購入!『ぼくのともだちおつきさま』 お月さまに出会った「ぼく」は湖の上で楽しい時間を過ごし、家にもお客に来てもらいます。 |
この絵本がいいのは、友達と出会って、たくさん素敵な経験を重ねていくことだけでなく、そこから次の出会いが生まれることです。友達の友達はみんな友達。「はじめまして」「こんばんは」。月並みな挨拶から始まる大切な関係が見事に描かれていて、最後の3人でのお茶のテーブルに、いつか自分も加われそうな気がします。ちょうど読者を迎え入れるように、主人公の向かい側は空いていますしね。
また、柔らかい色彩にもノックアウトされてしまいます。
■『ぼくのともだちおつきさま』
作:アンドレ・ダーハン
訳:きたやまようこ
出版社:講談社
発行日:1987/1999年6月
■『おやすみなさいをいうまえに』(ぼくのともだちおつきさま2)
小鳥たちを楽しませたいお月様がちょっと羽目を外してしまったり。「おやすみなさい」を言う前のとびきり素敵なお友達に、後半では立場が逆転するのが楽しいところです。
作:アンドレ・ダーハン
訳:きたやまようこ
出版社:講談社
発行日:2002年3月
■『もうひとりのともだち』(ぼくのともだちおつきさま3)
「すてきなともだち」賛歌です。ぼくと、お月さまと、太陽とそして星。ダーハンの色彩は本当に美しいです。楽しげな「さんにんより よにん」の図を堪能できます。
作:アンドレ・ダーハン
訳:きたやまようこ
出版社:講談社
発行日:2002年7月
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