危険な場所、危険な人とは
子どもが狙われるのは、町の中で大人の目が届かない「死角」。子供たちには、基本的なリスク管理として、危険な場所へ近づかないことを教えなければなりません。昨今の社会的要請を受けて、各公立学校では子供たちと一緒に「地域安全マップ」の作成に乗り出しています。「子供の危険回避研究所」所長の横矢真理さんは、著書『犯罪の危険から子どもを守る!』の中で、子どもたちと一緒に地域安全マップを作るメリットに触れ、自分たちが住んでいる地域を歩いてみることで、地域への関心や危機管理意識が高まり、『どんな場所が危険か』を考えることによって想像力や判断力がつきます。そして、地域の人と関わることでコミュニケーション力も高まるでしょう。つまり、地図のできあがりよりも、むしろそのプロセスが非常に重要なのです
と述べています。
⇒【子どもを守る地域安全マップを作ろう!】from All About[幼児教育]
⇒【安全学習マップ「キッズセーフティマップ」】from All About[幼児教育]
書店の店頭には、「子どものための防犯本」が並んでいます。どれも身近で具体的な例を挙げ、イラストを多用し、ふり仮名を振るなどして、小さな子どもにもわかりやすく説明しているのが特徴です。例えば、「危険を感じたときの対処法」を標語にした、「今日はイカのおすし」(警視庁考案)など。このように、「子どもに伝わる」表現で、防犯意識を高めることが大切です。
車には『の』らない
何かあったら『お』お声を出して
『す』ぐ逃げる。
そして大人に『し』らせる
⇒【子どもが自分で自分を守る12のポイント】from All About[幼児教育]
そして、「危険な人」がどのような人なのか、教えることも重要です。子どもには、他人への信頼感や優しさを教えてあげたい。しかし、犯罪は子どもたちの無邪気な信頼を逆手にとるというのも事実なのです。
知らない人についていかない、という基本的なことはもちろんですが、知らない人ばかりが「危険」ではない、と欧米の子供向けの防犯本は教えます。その内容は、性犯罪をタブー視してきた日本人にとってはショッキングですが、先生や親戚や親までもが子供に危害を加える可能性があると教えるのは、犯罪先進国ゆえの防犯教育なのでしょう。
日本の店頭に並び、よく売れている防犯本は、日本の実情に合った教育内容になっています。いたずらに子どもたちの危機意識を煽るのではなく、身近でわかりやすい例を挙げているという感想を持ちました。
被害にあった子供は自分を責めてしまう
もし、被害にあったらどうするか。先ほど述べた「イカのおすし」の「し――信頼できる大人に知らせる」の部分です。子どもから話を聞いた大人は、心配のあまり「どうしてそんなところに行ったの」「隙があった」などと不安を怒りとして表現してしまう傾向があります。しかし、被害にあった子どもに向かってなじるのは絶対にやってはいけないことです。被害にあったのは、その子どもなのですから。子どもによる話が多少混乱していても、まずはすべて受け入れ、信用してあげることが、子供のこころを救います。
被害の内容が深刻であればあるほど、当の子供は他人に告白することができません。そのショックや混乱を考えれば当然のことです。また、子どもは「自分が悪い子だったからあんな目に遭ったんだ」と、自分を責めてしまう傾向があります。こんなことを言ったら大人に怒られてしまうと考え、だから一層こころの奥底に沈めてしまいます。「このことを大人に言ったらだめだよ」と、それが卑劣な犯罪者にとって好都合な隠れ蓑になってきたのです。
「ちゃんと言えてえらかったね」
「一緒に解決しよう」
と、一度信頼を踏みにじられた子供に、また「信頼できる大人がいるのだ」と教えてあげることが大切です。