法務省の再犯防止プログラム


社会に「放り出す」一方で、その後を監視するだけというシステムに、綻(ほころ)びはないだろうか。犯罪の根本的な動機となる部分に働きかけずして、犯罪の抑止と矯正は成り立たないのではないだろうか。

現在、日本の刑務所では性犯罪者など犯罪の類型別に教育・指導している。今回の奈良市の女児誘拐・殺害事件を機に、南野法相はこの矯正教育に見直しも必要との考えを表明。有識者の意見を聞くなどし、より効果的な矯正プログラムを検討する意向を示した。

《性犯罪者の保護観察を強化=再犯防止へ指導プログラム-法務省》

法務省は23日、性犯罪で服役して仮出所した出所者の保護観察を強化する方針を固めた。奈良の女児誘拐殺害事件の容疑者に性犯罪の前歴があったことを重視し、仮出所中の性犯罪者に対しては保護観察官が直接指導を行うことにした。

現在、仮出所者の監督や指導はボランティアの保護司が中心に行っているが、強姦(ごうかん)や強制わいせつなど再犯の恐れがある性犯罪の場合は、より専門的な知識を持つ保護観察官が指導に当たる。

保護観察官は家庭訪問や面談を通じて、仮出所者の精神状態が不安定になっていないか把握するように努める。仮出所者が悩みを抱えていれば、性犯罪を再び犯すことがないようにカウンセリングを行う。

また法務省は保護観察官や保護司に対する研修を充実させる。性犯罪者向けの指導プログラムの研究・開発に向けて、専門家の意見を聞くための有識者会議の設置も検討する。(時事通信 1月23日)


矯正教育の実態


刑務所内における、性犯罪者の矯正教育とはどういったものなのか。このたび初めて「性犯罪者」を特に対象にした保護観察が発表されたことからも想像できるように、これまで性犯罪者を特に対象とした矯正プログラムが施されることは稀だったといわれている。性犯罪のみが特殊な犯罪と捉えられてはいなかったということだ。世間の耳目を集めるような、よほど凶悪な性犯罪を犯したものでない限り、特別な矯正プログラムが組まれることはなかった。

しかし、異常性愛の傾向などは、習慣性の問題でもある。収監されたり、刑を満了したりということで矯正されるものではなく、まして精神論で片付くものではない。

欧米の矯正教育の例では、異常性愛や暴力的な性愛の傾向を持つ受刑者に対して、性刺激に対して興奮すると激痛を与えるといったような「パブロフの犬」的矯正法を取ったり、重度の者に対しては去勢手術やホルモン治療、はたまた古くは脳外科手術(ロボトミー)といった手段まで取ることがあったという。

これらの手法は、性犯罪の原因をホルモン分泌異常や人格異常と捉えた、非人道的なものとして批判されることもしばしばである。


「再犯率高い」説の説得力


「パブロフの犬」療法や去勢など、そこまで踏み込むことが本当に必要なのか、また極論としてそれが普及してしまうことを懸念する議論もある。

日本では人権問題もあり、一般的にそこまで踏み込むことはまずない。ほとんどがカウンセリングや精神分析、モラル教育による解決を図ることになっている。これもまた、凶悪犯の釈放時に「手ぬるいのではないか」と議論される要因ともなっている。

最近でも、神戸の連続児童殺傷事件を引き起こした少年Aが7年弱の収容・治療期間を経て少年院を仮退院するにあたり、同じような議論が沸き起こった。やはりここでも俎上に上がったのは、再犯の懸念であった。「彼が特殊な性刺激を求めないという保証はない」という論調に対し、「頭の中まで矯正することはできない」という反論があった。

性に関しては、思想の自由や表現の自由の議論まで行き着いてしまうので、容易ではない。しかし、犯罪に及ぶという段階になれば、話は別だ。私たちもまた、性犯罪が個人の嗜好と密接に関わっていることを理解しているからこそ、「再犯」を懸念するのではないか。「性犯罪者の再犯率が高い」という説が根拠のないものだ(⇒「『再犯率」のトリック』参照)と頭では理解できても、感情的に説得されてしまうのには、そこに原因があるのだと考える。

今回の法務省の保護観察見直しには、性犯罪前歴者の監視と指導、両面からの取り組みを感じる。犯罪というものが本来社会的な枠組みの中で定義されるものである以上、こういった、コミュニケーションと社会性を伴うアプローチに共感するものである。

(この項続く)次回:「メーガン法を巡る賛否両論(終)」~日本的メーガン法論争の着地点~



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被害者の人権と加害者の人権。よく語られるこの問題ですが、皆さんはどうお考えでしょうか。今回取り上げるのは、奈良小1誘拐・殺害事件を契機に話題となっている、「性犯罪前歴者の、住民への情報公開」です。

ただ、これは小泉首相も支持し、先日警視庁・法務省発表のあった「性犯罪前歴者の現住所把握」とは別もの。個人データを、関係官庁までに留めるか、それとも一般住民にインフォームするかの、大きな違いがあります。

「性犯罪前歴者の、住民への情報公開」について、
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【女性・子どもの防犯】(All About ”防犯”サイト)

女性や子どもは犯罪の標的にされがちなもの。危険の可能性を知って、危険に近づかないことです。日常生活の中でいかに身を守るべきか、しっかり学んで被害を未然に防ぎましょう。

メーガン法を巡る賛否両論(1)~性犯罪者の情報開示は妥当か

メーガン法を巡る賛否両論(2)~「再犯率」のトリック

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