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子育ての「ある」瞬間……あなたは思いとどまれる? 英国児童虐待防止協会は訴える(2ページ目)

英国児童虐待防止協会(NSPCC)が子どもを持つ親に向ける広告が秀逸だ。私達が子育ての中できっと経験している、ストレスが限界値を超える瞬間を切り取り、「虐待を思いとどまれ」と訴える。

河崎 環

執筆者:河崎 環

子育てガイド

英国の児童虐待事情

英国には、英国児童虐待防止協会・NSPCC (National Society for the Prevention of Cruelty to Children)という、子供たちへの虐待防止や保護を専門にするチャリティ団体があり、非常に強い力を持っています。

1884年にLondon SPCCとして設立されて以来、政府や警察などとの強い連携関係を持ち、児童虐待問題(性的、肉体的、精神的暴力、また育児放棄など)への対処に努めてきました。(よく、犬を愛するお国柄の英国では児童虐待防止団体よりも動物愛護団体のほうが歴史が古い、というジョークがありますが。)マイケル・ジャクソンなどの著名人がチャリティイベントを催し、NSPCCに寄付をしたりするのでも有名です。

英国では、虐待の通報が学校・病院関係者・子どもの周囲の人・チャイルドライン(電話相談)、NSPCCなどから警察に寄せられると、警察署内に設置されているチャイルド・プロテクション・チームが社会福祉局(ソーシャル・ワーカーがいます)と協力して活動を開始します。

調査の結果、子どもの状態に危険が認められたり、危険が強く疑われる場合、警察または裁判所が子どもを危険な場所から保護する命令を出すことができます。場合に応じて保護命令の効力は3日間から8日間までに及びます。福祉局との調査・検討によって、虐待が疑われた子どもは「登録」され、向こう6ヶ月の保護プランが立てられます。そして子どもの安全を確保した上で「ケース会議」が執り行われ、対応を協議するのです。

ケース会議は、ソーシャル・ワーカー、学校の担任や校長、病院関係者、警察官、父母(弁護士を伴う場合もある)、保護監察官などが集まって行われ、場合によってはNGOやNSPCCのメンバーも出席します。さらに、福祉局の保護プランは半年ごとに見直され、裁判となった場合には、NSPCCが子どもに連れ添って法廷の下見に行ったり、裁判の際、傍聴席などに座ってサポートしたり、裁判が終わるまで子どもとコンタクトをとるのです。

関係機関が連携しつつサポートできる仕組みを早期に作り、当事者である親も含め関係する大人達が子どもの将来を一緒に考えるというシステムが確立しています。


NPO先進国

イギリスでは、近年、民間非営利団体(NPO)が多様化し、ますます増加していくにつれて、非営利セクターの現状に沿った法や規制の見直しに着手しました。

2002年に議会に提出された報告書では、一般国民の信頼度を高めるために、チャリティ団体やその他のNPOに、アカウンタビリティ(説明責任)と透明性を向上させることを求めています。しかし目的は政府が団体を管理することではなく、同時にその独立性、オープン性を確保し、団体の大きさに応じた柔軟性をもたせているのが特徴的です。

一方で民間非営利団体側は、2003年チャリティ法改正に向け、代表的なチャリティ団体やNGOの計23団体から成るチャリティ法連合体 (Charities Bill Coalition)を発足させました。主な参加団体には、WWF、アムネスティ・インターナショナル、赤十字、NSPCCなどがあります。

このように、チャリティの歴史も古く、法整備や救済システムもより現実的な英国。だからこそ、あの広告のように虐待防止を効果的に訴えるアピールをし得る、知恵と蓄積があるのかもしれません。





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