ワーキングマザーが作ったお弁当をあげつらう一斉メール

お弁当

「ねぇコレ見て」お弁当の写真が一斉送信された

その日、幼稚園年長ゆり組の一部の母親たちの間で、一通の写真付きメールが一斉送信された。

「コレが今日のAちゃんのお弁当です(絵文字)
鶏唐揚げとおにぎりだけ、しかも冷凍っぽい……カワイソー(絵文字)
そりゃゆがむよねー(絵文字)
お母さん何してるのかしらね(顔文字)」

カラフルな顔文字が揺れるそのメールが示しているのは、その大学付属幼稚園のゆり組で一番お遊戯もお絵描きも上手で口も達者な愛くるしいAちゃんを、その母親ごと「仲間はずれのターゲット」にする宣言だった。

高学歴・高収入・高ステイタスの「偏差値高い」母

Aちゃんのお母さんは、その幼稚園を30年前に卒業して付属小中高とおっとり育ち、勉強が得意だったゆえに国立大の医学部へと進学して、父亡きあと現在は実家の医院を兄と継いで開業内科医をしている、穏やかで責任感強く、優秀な女性だ。

地元に密着した医院の内科医ということで、地域の高齢医療や乳幼児医療にも深く関わり、彼女なしに医院は成り立たない。馴染みの患者を大事にするため、休診日はあってないようなもの。ブランドものなど身につけるわけでもなく、「患者さんに失礼のないように」最低限の薄化粧と動きやすい格好で、整形外科医の兄とともに何人ものスタッフを使って医院を切り盛りする。

意外かもしれないが、夫はサラリーマンだ。同じ大学のサークルで、別学部の彼と出会い、医者一家の自分とは違う世界観に惹かれた。研修医時代は、彼もヒラ社員でこき使われて多忙な中、彼の家事力に助けられた。一通りの家の仕事ができ、自立した男性で、子どもも好き。「あぁ、女性が高収入でバリバリ働いて、男性が仕事をセーブしながら家事をするような『逆転夫婦』ね」と思われるだろうが、事実は少し違う。Aちゃんのお母さんは、子どもが生まれると、母親としてできることはやってやりたいと思い、子育ては「基本、平日は母親である自分がなるべくする。あなたは休日を担当して」と、広い自宅で同居する母親や家事サービスの力も借りながら保育園・幼稚園の送り迎えや幼稚園入園後のお弁当づくり、行事への参加もできる範囲で担ってきた。