社会現象の高みから絶版へ蘇った「エロイーズ」
1955年、「エロイーズ」が発売されるやいなや、一大センセーションが巻き起こった。マンハッタンの上流階級からやってきた、過激なヒロイン像は、当時のアメリカの知識人から田舎の少女たちまでを魅了し、大ベストセラーとなる。
人形、おもちゃ、洋服など、かつてないトータルな販売戦略がとられ、50~60年代を席巻した「エロイーズ」は、しかしこの後3冊の続編を経て、突然絶版となってしまう。
歌手で著名なダンサーでもあった、著者ケイ・トンプソンと出版社のトラブルだと伝えられているが、1998年のケイの没後、「エロイーズ」は約35年のブランクを乗り越えて待望の再版を迎えた。
その年、プラザ・ホテルには「エロイーズの生家」と謳った真鍮のプレートが輝き、5番街のF.A.O.シュワルツ(高級玩具専門店)では、巨大なエロイーズのクリスマスディスプレイが掲げられ、ショウウィンドウを賑わした。
そんな「エロイーズ」熱を象徴するかのように、映画「ユー・ガット・メール」では、主人公メグ・ライアンの経営する絵本専門店のレジの奥に、「エロイーズ」の巨大なポスターが貼ってあるのを見つけることができる。
日本では井上荒野さんの軽妙洒脱な訳によって、昨年4月から「エロイーズ」シリーズとして順次発行されており、全国の大型書店で発売中だ。
「エロイーズ」の後ろのほうには、マリー・ブレナーによるスクラップ・ブックと題して「エロイーズ」の舞台裏が紹介されている。これも合わせて読むと、「エロイーズ」の魅力をより深く味わえる。(メディアファクトリー刊)