万年筆には「見る楽しみ」もある。
ガイド:
さて、最後にこれから本格万年筆を買いたいという方にプロとして何かアドバイスなどございますか?
皆川さん:
私はよくお客様にご説明させていただくのですが、ペンの持ちやすさ使いやすさということに加え、「見せる楽しみ」ということもとても重要であると申し上げています。万年筆は手に持って使うものですので、当然お客様の手にフィットする太さや長さといったことももちろん重要です。しかし、いくら書き良くても見た目がお客様の好みに合わないと結局次第次第に使わなくなってしまうものです。万年筆を使っていて、「それ素敵な万年筆だね」と、人から注目され、ほめられるのは使ってるご本人としましてもすごく嬉しいものです。そういう意味でも「見せる」ということもひとつ重要なポイントとしてお考えになってみるのもいいと思います。
それから初めての方にはカートリッジ式が便利だと思われがちですが、必ずしもそうでもありません。メインテナンスを考えますと実はボトルでインクを吸い上げる吸入式やコンバータ式の方が優れている面があります。インクを吸い上げると言うこと自体がメインテナンスになりますので。カートリッジではインクがペン先にいくだけの一方通行の流れしかりません。メインテナンスをするには別途コンバータを付けて水を吸い上げて吐き出すという事しなくてはなりません。
ガイド:
初めての一本として、オススメの万年筆をあげるとしたらどんなものですか?
皆川さん:
ひとつは「ウォーターマンのカレン」です。万年筆が初めての方は、どうしてもこれまでボールペンに慣れていますので、筆圧が強めです。その強い筆圧でもすんなりと馴染めるのがこの「ウォーターマン カレン」なのです。ペン先を先端から見ると、アーチ状になっていますので、硬めの書き味になっています。
また、国産では「パイロットのカスタム74」は硬めのペン先そして全体的なバランスがとれた一本です。また、滑らかな書き味をお求めの方には、セーラー万年筆の「プロフィット21」や「プロフェッショナルギア」の中字以上がいいでしょうね。
頼りになる万年筆のソムリエ。ぜひ色々と相談してみたい。 |
ガイド:
本日はありがとうございました。
取材後記
現行品の販売のために、ヴィンテージ万年筆の知識が必要というのには、目から鱗が落ちるお話でした。こういう書き味のものが欲しいというお客様からの要望に応えられるいくつもの引き出しを持つということなんですね。
私はこれまで万年筆を買う時にあらかじめこのブランドのこれ、という具合に決めてから買いに行くことが多くありました。しかし、今回の話をお聞ききして、今度はまっさらの状態で、書き味だけのイメージを伝えて買ってみるのも、楽しいかもしれないと感じました。きっと全くマークしていなかった一本と出会えるかもしれません。
このお客様の意向にあわせて万年筆を見立てるということ、これはちょうど、ワインのソムリエに実によく似ています。
<関連リンク>
銀座・伊東屋 公式サイト
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