ISOT2006(国際文具・紙製品展)の時に参考出品されていたのを見て以来、ひそかに注目していたペンがあった。シヤチハタの「ネームペン サイン」である。展示会の時は、ガラスケースに入っていて手に取ることが出来なかったが、これまでにない斬新なデザインはガラス越しからでも、ただものならぬオーラを漂わせていた。そのペンがこの度発売されることになり、たっぷりとペンの試し書き、そしてハンコの試し捺(お)しを満喫させていただいた。
今回は、この新しいネームペンの魅力に迫ってみたいと思う。
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シヤチハタ ネームペンサイン
弱点を逆手にとったような斬新なデザイン
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スタンプ台のいらないネーム印とボールペンを
一本にまとめたネームペン
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キュッと絞られたスタイルネームペンというとペンのトップ部分にハンコを備えているため、どうしても、見た目の印象は頭が大きいペンというイメージがある。今回の「サイン」では、そのハンコの大きさをあえて強調するかのように、ボディの中央をキュッとスリムになっている。確かに、ハンコはとても強調される形になっているのだが、不思議とこれまで感じていたような頭が大きいという印象はなくなっている。実に不思議だ。これまでのネームペンは、ハンコのあるトップに行くに従ってラッパの様に広がりを見せるものが多かったが、「サイン」では、ボディの両端が逆にだんだんと細くなっている。きっと、これが必要以上にハンコを大きく見せない絶妙なバランスを生んでいるように思う。
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丸みを帯びたフォルムは、手にした時の感触がとても滑らかペンには珍しく、ボディは角ばったところは一切なく、どこもかしこも丸みを帯びている。手にした時の、滑らかな感触が気持ちいい。丸みを帯びているということで、ともすると優しい印象になりがちだが、「サイン」では、優しさよりもむしろ力強さがある。「サイン」を立ててじっと見ていると、ちょうど筋肉隆々としたたくましさみたいなものが感じられる。
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スリムになったボディがハンコを捺す時の絶妙なグリップを生むこのスリムなスタイルの本領は、実はハンコを捺す時に発揮される。キャップをはずし、捺印体勢に入ると、先ほどのスリムボディが指先にピッタリとフィットしてくる。ペンもハンコも3本の指で握るという点では同じだが、ひとつだけ違うことがある。それは、ハンコは垂直に立てて握るという点だ。垂直に立てるには、人差し指の第2関節くらいまで、ボディにピッタリと添える必要がある。これは文字を書く場合とは違う握りだ。「サイン」ではスリムになっていることで、人差し指がとても添えやすく、ホールド感がすこぶるいい。ゴルフの基本はしっかりとしたグリップから始まると言うが、ハンコにおいてもグリップの大切さを痛感させられた。
しっかりとしたグリップから繰り出される快適な捺印をポンポンと捺していると、このスリムなスタイルをどこかで見たような気がしてきた。そうだ、お餅をつく時の「杵」にどことなく似ているではないか。考えてみれば、お餅をつく時の杵の動きと、ハンコを捺すときの動きは振り下ろすというところがちょうど似ている。ペンの両端が重くなっているので、快適に振り下ろすことができる。ハンコを捺すのがとても楽しくなる。
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