■ パイロット キャップレス 万年筆
万年筆と言うと、手紙や原稿を書いたりと、ちょっとかしこまった時に書くものという印象がある。確かにそれは万年筆ならではの魅力だと思う。しかしながら、ビジネスシーンでポケットから取り出して、さっと書くという点においては、ボールペンにはちょっとかなわない。
万年筆は構造上、キャップ式のものが多い。キャップ式だと、両手を使ってキャップをはずすという動作がどうしても必要となる。メモを持って、立ったままの筆記となると万年筆ではちょっと大変。
なので、万年筆はじっくりと腰を落ち着けて書くということが、どうしても多くなってしまう。
あのサラサラとした滑るように書ける万年筆の書き味をいろんなところで味わえたら・・・。ボールペンのようにさっと書ける手軽さがあったら・・・。そんなわがままをかなえてくれる素敵な万年筆がある。
それが、パイロットのキャップレス万年筆だ。
キャップのない万年筆の秘密を探る
クリップとノックボタンがペンの両端に付いているユニークなスタイルがとても特徴的 |
この万年筆、商品名のとおりキャップがない。その代わりにノックボタンがある。よく見てみると、通常のペンとは何かが違う。それはクリップとノックボタンの位置関係。ふつうのペンでは、クリップの付いている側にノックボタンもあるものだが、このキャップレスは、クリップとノックボタンが両端に分かれている。なんとも不思議な感じがする。
そのノックボタンをぐいっと押し込んでみると、これまで味わったことのない、メカニカルなカチっという心地よい音と共に、万年筆のペン先がちょこんと顔を出す。もう一度、ノックをすれば、ペン先が収納される。
この感覚はまさに、ノック式ボールペンそのものだ。
ノックボタンをカチっと押し込むと・・・ |
ペン先の穴を覗き込みながら、カチッカチッとペン先の出し入れの様子をよーく観察してみると、実によく考えられた仕組みを見ることができる。ペン先の穴の中には、シャッターと呼ばれるフタが付いていて、ノックをすると、それが開いてペン先が出てきて、もう一度ノックをすれば、ペン先が引っ込みながらフタが閉まっていくという動きをしていたのだ。
ペン先の中にあるフタが開き・・・ | ペン先がとび出してくる |
書き心地はというと・・・
こうしたペン先の中で繰り広げられているふたの開け閉めをつかさどっているためだったのだろう、ノックする時のストロークがふつうのペンに比べいくぶん長い。それをカチッとノックをしてみると、ふつうの万年筆の半分にも満たない小さなペン先が出てくる。さらに驚かされるのは、握るところにクリップが来てしまうことだ。
ペン先は少ししか出ていなくても、弾力のあるペン先から生み出される万年筆独特の滑らかな書き味はとても心地がいい。また、ちょっと紛らわしいがグリップのクリップについては、握ってみると、親指とひとさし指でクリップをはさみこむ形になる。そのクリップの中央部分は、少しばかりスリムになっているので、親指とひとさし指がぴったりとフィットする。まるで、ガイド付きグリップのようで、これが思いのほか握りやすい。
はたからから見ると、ペンを逆に持って書いているように見えなくもないが、実は当人にとっては、この上なく快適なのである。
キャップなしで、インク漏れは大丈夫?
穴が見えるのだが・・・このペンを携帯する時は、シャツの胸ポケットにキャップレスを挿すことになる。ふと、その胸元に目をやると、ぱっくりと口を開けたペンのトップ部分が見えてくる。内蔵のフタがしっかりと閉まっているとは言え、何だが心配な感じがする。しかし、ペン先の中のフタの機密性が大変よくできているので、シャツをインクで汚してしまうということはなかったし、さらに図に乗って、ペンを横にして鞄の中に入れてみたりもしたが、インクが漏れることはなかった。
これなら、心置きなくいろんなところへと持ち出せる。
新たな万年筆の楽しさが広がる
ポケットから颯爽と取り出し、ワンノックですぐさま、筆記体勢に入ることができる万年筆。これまでとは、ちょっと違った万年筆ライフを楽しむことができそうだ。■ パイロット キャップレス 万年筆 スタンダードタイプ 15,750円 (ペン先 18金) ベーシックタイプ 10,500円 (ペン先 特殊合金) *今回、ご紹介しているのはベーシックタイプです。 |
<関連リンク>
■パイロットコーポレーションのオフィシャルサイト
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