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Uチップの種類とは?VチップなどUチップ派生の革靴

Uチップはビジネスシーンでもカジュアルなスタイルにも合うおすすめの革靴。そのUチップの派生形とも言える種類の革靴を採り上げます。生まれてきた背景がそれぞれ全く異なるので、本来の使われ方も従来のUチップとは、似ているようで大分異なります。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

 

Uチップの派生形といわれる種類の革靴を紹介!

 Uチップの種類とは
向かって左からVチップ、Uチップそしてスワールモカシンです。デザイン上は僅かな違いですが、起源は随分異なります。

「カジュアル? ビジネス? Uチップ」で、日本では一般的に「Uチップ」と呼ばれる靴を解説致しました。「この種の靴にダークスーツを合わせるのは、一種の掟破り行為」などと書いてしまったためか、結構反響があり驚きました。まあ、装いの領域では絶対解はその人次第、必ずしも1つとは限らないものですので、以前の記事を機に自らの装いについて改めて「考えて」頂けるきっかけになれば、たとえ小生と結論が違っているとしてもそれが一番嬉しいですよ。さて、今回はそのUチップの亜種とも言え、近年人気が急速に高まっている2つのスタイルの靴について、じっくり見てゆきましょう。その生い立ちは、両者で結構対照的です。
 

Uチップの種類……アメリカ型Uチップの発展形でもあるVチップ

オールデンの54411
つま先のモカシン縫いの形状が独特な、オールデンのVチップ。日本ではアッパーにコードヴァンを用いたものが有名。靴紐の通し方にご注目あれ。

アメリカ型のUチップのうち、つま先のモカシン縫いが「U」の字と言うより「V」の字に近いものを、Vチップと称します。特に最近では、モカシン縫いが側面の革の上に甲部の革をシンプルに縫い合わせたもので(これを「乗せモカ」と言います)、その形状もそれほど鋭角的ではないものを、こう呼ぶ傾向が強いです。上の写真にあるオールデンのものが、押しも押されもせぬ最強の代表例です。

このスタイルは、そのオールデンが1950年代に整形外科的なアプローチで様々な木型を開発・改良していった中で、「履き心地」と「見た目の自然さ」を両立させるべくUチップを理論的に結晶化していったもので、アメリカのメーカーらしい道具主義的な傑作と言えるでしょう。彼らが開発した木型の中で、もっとも有名なのが、「モディファイド・ラスト」と呼ばれるもの。長いそら豆状のシェイプそのものはいかにも履き心地最優先で、お世辞にも洗練されたものとは言えません。が、アッパーをこのVチップにすると、表情から違和感がサーッと消え、むしろ応用が利きそうな顔立ちに見えてくるから不思議なものです。

なおこのスタイルに関しては、細かいようですが折角だから靴紐の通し方にまでこだわっていただきたい! 小指側の鳩目を、足の動きに即して親指側より明らかに前に置いているので、通常の「パラレル」で通すと不恰好なのです。上の写真のようにつま先から甲に向かってΛ字状になる「アンダーラップ」と言う通し方をしていただくと、甲周りがギュッと押さえられ履き心地にシマリが出るだけでなく、見た目も自然になるんですよ。
 

Uチップの種類……黒系スーツスタイルと相性がいいスワールモカシン

ジョンロブ(パリ)のミラン
ファッショントレンドを意識したジョンロブ(パリ)のミラン。21世紀に入り英仏融合のトラッド路線から、モダン性重視にブランドコンセプトが確実に移行したロブパリ。その転換期に生まれたモデルがこのミランです。

アッパーの甲周りにあるモカシン縫いがU字の蓋状ではなく、2本線のままつま先に落ち込んでゆくスタイルの靴を、「スワールモカシン(Swirl Moccasin)」と呼びます。”Swirl”とは英語で「水平に見える渦」の意味で、確かにこの種の靴を真上横方向から見ると、モカシン縫いの線がジェット気流のように水平につま先に流れてゆく感があります。上の写真のジョンロブ(パリ)の靴は、モカシン縫いが途中で消えるので厳密にはスワールモカシンではありませんが、このブランドらしい洗練されたアレンジと考えてください。

この種の靴、実はその線がモカシン縫いでなくとも、例えばブローギングや単なるステッチングであったとしても、もはや「スワールモカシン」と呼ばれてしまっています。一応総称としては「バイシクルフロント(Bicycle Front)」なるものもあるのですが…… また紐靴ではなくスリッポンであっても、こう呼ばれます。いずれにせよ、1960年代初期のモッズムーブメントの頃に流行ったアンクルブーツのスタイルが、1990年代後半にミラノやパリのモード界から発信されたネオモッズムーブメントの中で再評価され、ブーツではなくシューズとして蘇ったものと考えていただいて結構です。

斯様に感覚美的な背景を持っているため、モード系ラグジュアリーブランドのものによく見られる細身の黒系スーツとの相性が、本来は理想的なものでしょう。その意味では、個人的には一過性のデザインの感があるのも正直なところです。ただ、2本の水平線の視覚的効果で足が細長く見えるのと、折からのロングノーズな靴の流行とが重なり、このスタイルは21世紀に入って以降、特に若い世代向けのドレスシューズのデザインに驚くほど急速に勢力を拡大し、今日に至っているのも事実です。皆さん朝夕の通勤時間帯にでもチェックされてみて下さい。足から上の装いや世代、それにメーカーやブランドがどうであれ、この種の靴を履かれている方、大変多いですよ。でも、ここまで猫も杓子も無意識に履かれてしまうとねぇ……
 

Uチップの派生形「Vチップ」はビジネスシーンでも大活躍

Vチップの履き方の一例。
Vチップって、不思議と色々な服と合わせられてしまうのです。その意味からもスポーツ&カントリー起源のUチップの進化形と言えるでしょう。

スワールモカシンに関しては、上述の通り今後普遍化してゆくのか単なる感覚的流行で終わってしまうのかが未知数です。ゆえに履き方に関してもまだ定義し切れない、というかまだ無理に定義する必要もないのが実情だと思います。今後の成り行きを、注意深く見守ってゆきたいところですね。

対照的にVチップは、履き心地と美観の両面から合理的かつ論理的に突き詰められて完成していった背景があるせいか、Uチップ系の中では現在一番汎用性が高く、スーツとの合わせも、難なくできてしまう気がします。

流石にフォーマルウェアや重厚なダブルブレストのジャケットなどには合わせられませんが、例えば何泊かの出張や旅行で靴を1足しか持って行けない際などには、このVチップこそ今日最適な靴かもしれません。足にも優しいし、モカシン縫いもシンプルなので靴のスタイルが必要以上に出しゃばって来ず、ゆえに合わせる服のスタイルも色合いも気にしないで済むからです。

そう、偶然”V”同士ではありますが、これはちょうど外羽根式の Vフロントプレーントウを若干カジュアルにした使い方と言えそうです。その意味では、Vフロントではちょっと生真面目過ぎると考える方が代わりにこのVチップ、などといった選択肢も大正解だと思います。皆さんもこの微妙なニュアンスの「差」を、上手に活用してみて下さいね。

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