こちらも結構、多彩なのです!
甲のモカシン縫いが特徴のUチップ。これもよーく見ると、バリエーションが豊富なのです。 |
今回は日本では一般的にUチップと呼ばれている、アッパーの甲周りがU字の蓋状に縫い付けられている原則的に外羽根式の靴について解説してみます。Uチップ、とひと括りにしてしまいましたが、大まかにかつ大変強引に申せば、国別にスタイルの違いが見られる、興味深い靴です。なお、上述の縫い目は「モカシン縫い」と呼ぶのですが、これにも様々な種類がありまして、それについては別の機会に改めて説明してゆきたいと思っています。
一見カントリーシューズっぽくない、イギリス型
つま先のスキンステッチが一大特徴の、クロケット&ジョーンズのアマーシャム。エドワード・グリーンの名作・ドーバーとは、甲のモカシン縫いが若干異なります。 |
イギリスではこの種の靴を「エプロン・フロント・ダービー(Apron Front Derby)」とか「ノルウィージャン・ダービー(Norwegian Derby)」などと呼び、1920年代から30年代にカントリーシューズとしてスタイルの原型が完成します。前者は読んで字のごとく、靴の前方が丁度エプロンを垂らしたような形状に見えることから付いた名称です。また後者は前出の「モカシン縫い」の起源の一つが、ノルウェーの漁師の陸上靴に由来することから付けられたようです。
特徴はトウの先端にある縦割りの縫い目です。単なる割り縫いのステッチになっていたり、靴によっては糸が表面に露出しないよう縫われている場合もあります。後者はかなり高度な技術を要する縫製で「スキンステッチ」などと呼ばれ、1990年代以降靴好きの間では大変もてはやされるディテールになりました。
いずれにせよ、トウの先端に縫い目を縦割りに作ることは、つま先の側面の革が1面増えることを意味しますので、これがないUチップに比べ、履き心地に影響を与えずより立体的でスマートな造形が可能になります。このスタイルであまりに有名になってしまったのが、エドワード・グリーンの”Dover”と言うモデルですが、確かに、カントリーシューズらしからぬ細面な顔立ちに仕上がっていますので、茶系のものでもビジネススーツに合わせたくなる心理も、解らなくはありません。
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