最初に紹介するのは日本のシューモードを創り出したといって過言ではないインポーター、マグナム。例えば、まさにシューモードをけん引するプレミアータ。ノーズの長いパンキッシュなコレクションで一世を風靡したが、今、グラツィアーノ(デザイナー)の興味の針はナチュラルな方向へ振れている。丸みを帯びた、だけど甲の立ち上がりが薄い木型はドンズバで今の気分(次回、このレーベルの春夏コレクションを紹介する予定)。一方で、抜群のコストパフォーマンスで本格靴を身近に感じさせてくれたエンツォ・ボナフェ。ハンドソーンで10万円アンダーというのは今日日驚異的といっていい価格設定だ。しかも、日本サイドからの提案が存分に盛り込まれているから、時代性を備えた靴に仕上がっている。
仕掛け人がツボさんこと、坪内さん。業界誌一年生の頃から世話になっている人だけど、卓越した感性はいつだって勉強になるし、大御所にもかかわらず少しも偉ぶらず、僕のような人間にも昔から丁寧に接してくれた。いつまでたっても頭の上がらない人です。
三原康裕といえば知らぬ人はいない、そしてシューデザイナーという存在を世間に知らしめた立役者だ。既存の枠にとらわれない発想からは世界を見渡しても稀な才能を感じざるを得ない。ひょっとしたらギミックととられかねない挑戦も三原さんはしているのだが(いやむしろ、彼はそんな危うい挑戦こそ喜々として取り組んでいるように見える)、一足の靴として完成したときには見事な調和を見せる。
それは三原さんが決して表層的でない、つくりにまで踏み込んだデザインワークを信条としているからこそ可能となった「調和」だろう。こちらがたじろいでしまうほど(笑)、呑めば日本の靴業界を憂えるトークを繰り広げる姿勢からも、揺るぎない彼のスタンスが伝わってくる。
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