そのオリジンは『ブルックス ブラザーズ』(以下BB)が1918年に紹介したスーツで、1950年代には「アイビー・リーグ・モデル」と呼ばれ、以後さまざまなスーツを派生させている。日本ではI型の名で知られている。
じつは店名のCaidも’50年代後半にIACD(国際衣服デザイナー協会)が発表した派生モデルの一つから命名しているのだ。
このスーツは上記の特徴の他に、ナチュラルショルダーとフロントダーツがないことが挙げられる。ここでアイビー&トラッド好きの諸兄なら『VAN』や『Jプレス』をまず思い浮かべるだろう。ただしケイドのスーツは’80年前後に流行ったあのアイビー・スーツ(あるいはブレザー)ではなく、’60年代のBBのスーツを基本としたものである。
1965年に婦人画報社より発売され、アイビーのバイブルとなった「TAKE IVY」(品切れ中)の世界といえばわかってもらえるだろうか。
■ラペル幅3インチが生み出す美しいライン
では細かなディテールを見てみよう。ベントはフックではなくセンター・ベントにすることで大人っぽさを表現。ラペル幅は’60年代を踏襲して細めの3インチ(7.6mm)を採用し、フロントカットはカッタウェイに仕上げている。
幅を3インチにすることで、第2ボタンからカッタウェイへと流れるラインが無理なくつながってくるのだ。通常の既製服ではありえない美しいラインである。
ラペルのステッチはマシンステッチにすることでアメリカンな匂いを残している。ステッチ幅は生地の厚みや、着ていく場所や目的に合わせて1/4インチ(約6~7mm)、1/8インチ(約3mm)、1/16(1.6mm)インチを使い分けている。写真のスーツはビジネス向きの1/8インチ(約3mm)だ。