意外にマジメ、すっかり身を任せられる安定感
2.8Tには最高出力296ps/最大トルク400Nmを発生する可変バルブタイミング機構付き直噴2.8リッターV6ツインスクロールターボエンジンを搭載。6ATを組み合わせた。エンジンはほかにもオーバーブースト機能が備わる1.6リッターターボと2リッターツインスクロールターボ、E85(バイオエタノール85%混合燃料)対応2リッターツインスクロールターボや3種類のディーゼルを用意する |
試乗したのは最上級グレードの2.8Tエアロ。派手めと大人しめの2種類の顔つきがあるが、エアロは派手めの方だ。踏ん張りの利いたエアロバンパー、航空機のキャノピーのように左右に回り込んだウィンドウグラフィックス、フィン状のホイール、なだらかに下るエンドピラーなど、コンセプトカー/エアロXから拝借したモチーフがそこかしこにみえる。ディテールはともかく、全体的にはシンプルな面構成であり、そこにスカンジナビアンデザインを感じる。
インテリアは、サーブそのもの。一瞬、中まで変える余裕がなかったのか、と思ってしまうほど。逆L字型のダッシュボードに、機能的な配置のスイッチ類、骨太のハンドル、たっぷりとしたシートなど、サーブらしい内装だ。メーター指針が鮮やかな緑で、イマドキけっこう新鮮。
フロントスクリーンに切り取られた景色のカタチがユニークである。飛行機のキャノピーを連想させる。ただし、Aピラーが迫っており、ミラーが大きいこともあって、斜めに死角ができてしまっていた。エンドピラーも相当に寝ているため、後方視界も天地が薄い。
クルマのサイズが大きくなった。よって、室内もかなりゆとりがある。前席ではフロントウィンドウが薄いせいもあってか、左右に広く感じる。後席の足下も広い。その代わり、頭上空間はボディ側からの圧迫が少しあった。
走りはどうか。結論からいうと“ちょっと変わった格好だけれども中身は意外とマジメで、付き合ってみれば面白みこそない代わりに安定感あってじっくりと向き合える”そういうクルマだ。全域に渡ってクルマがでしゃばるようなこともなく、すっかり身を任せてしまっていい気になるが、そこがまた気持ちいいと感じてくる。なかなか珍しいライドフィールの持ち主であるといっていい。
乗っていて、エンジンの存在感はあまりない。もちろん今どきのターボだからドッカンではなく、感覚的にはディーゼルターボのようなトルクのノリとエンジンの回り方だった。動力性能的には十二分である。速度感に乏しく、知らぬ間に速度が上がっていて驚くが、肉体的精神的疲れも少なかった。
流行りの走行モード別制御を使えば、スポーティセダンにも早変わりする。アクセルレスポンスやステアリングフィール、ダンパー、4WDなどのセッティングをハード走行に適したスペックに変えて走らせれば、ハンドリングマシンとしてもかなり楽しめた。
航空機の高度計をモチーフにしたスピードメーターを装備。メーター類の針やディスプレイ、などは伝統のサーブグリーンに光る。エアロにはフロントシートにサイドサポートが強化されたパワーシートや、レザーインテリアなどが備わる |
日本への輸入はVTホールディングス傘下のPCIが行う。サーブ本体としては、来年にミドルサイズのSUVと9-5のエステート、再来年に9-3のフルモデルチェンジ、さらにはよりコンパクトな9-1を世に問いたいということだった。