“テクノロジーのジレンマ”に対するVWの強烈な意思表示
エントリーモデルとして登場した1.2リッター直噴ターボエンジンを搭載するTSIトレンドライン。サイズは全長4210×全幅1790×全高1485mm。価格は257万円となる。エコカー減税にも適合、自動車取得税と重量税が75%減税される |
面白いことである。国産メーカーが先頭に立ち、しゃかりきになって進めてきた高性能化が、ここにきて全く違う展開をみせはじめた。VWの新しいゴルフに搭載された1.2リッターTSIエンジンは、従来の4バルブDOHCをあっさり捨て、シンプルな2バルブSOHCレイアウトとし、そこにターボチャージャーを加えることで、燃費と性能の向上をみたのだ。エンジンそのものをシンプルにすれば、補記類も減り、オイル消費も減って、いいことだらけ。性能さえ担保されれば、シンプルで安いことが一番のエコである。ボクはそこに“テクノロジーのジレンマ”に対するVWの強烈な意思表示=回答を感じ取った。
テクノロジーのジレンマとは何か。それは、工業製品における技術が進歩し続けた結果、実際に利用するユーザーの気持ちと大きな乖離が起こってしまうことだ。機能がいつのまにやら膨大となり、気がつけば人が完璧に使いこなせる範囲/能力をはるかに超えてしまっているにも関わらず、それを支えるシステムはさらに一層複雑かつ巧妙になって、技術者は最早ユーザーを忘れて技術革新にのみ執着し、さらなる機能増や世界初日本初を求めてしまう、という、一見間違っていなさそうで(だから質が悪い)良くない循環である。
そしてあるとき、ユーザーがエンジニアに対して反乱を起こすのだ。複雑な機能や操作なんていらない! もっとシンプルで使い勝手のいいものが欲しい、と。過去、オーディオやカメラなど、そんな例は身近にいくらでもある。
自動車だって、それに陥らないという保証はどこにもない。こと実用車に限っていえば、使わない機能、余計な性能にお金を使いたくないという人が増えているのではないか。趣味のクルマはムダなものにお金を費やして喜ぶが、実用はそうでない。快適で安全な移動手段という基本の性能に立ち戻った商品が欲しい、というユーザーが今後さらに増えてくるのは間違いないだろう。
標準ホイールは15インチスチール(タイヤサイズ195/65R15)で、ホイールキャップ仕様となる。コーナリングライトやフロントフォグなどは備わらないものの、上級モデル同様にグリルルーバーやエアインテークにはクロームパーツが用いられている |
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