“暴力性”を感じさせない激烈な加速
ダンパーの減衰力を磁性流体の粘性を変化させることで最適化させるマグネティックライドコントロールを装備。ツーリングとスポーツのモードが選択できる |
もっとも、それじゃ欲求不満がどんどん貯まってしまうのが、この手のハイパフォーマンスカーを日常的に使うことの宿命。どこかでその鬱憤を晴らしたい!ところが運悪く、遠出の取材予定がなかった。こんなとき、なにはともあれ実際にそういう行動へと駆り立ててくれるか否かが、個人的な評価の第一歩となる。CTS-Vはもちろん、早速、早朝の郊外ドライブへと私を誘った。
平日には、ひと小節しか聞けなかったスーパーチャージャーの作動音を、嫌というほど聞いてみよう。2000回転から徐々にうなりはじめ、4000回転以上になるとタコメーターがいっきに6000回転まで振れる。スーチャー作動音は聞いていて恐ろしいくらい。エンジンだけが飛んで行きそうな勢いだ。
それはもちろん、激烈な加速(スペックでは0→100km/h加速は4秒ほどと、ほとんどフェラーリF430級だ)を伴うのだが、スーチャーの音以外、不思議と手に汗握るスリルや暴力性を感じさせない。ターボのように、ドカーンと盛り上がる場面がなく、かと言って、AMGのV8スーパーチャージャーのような迫力もない。地力のある大排気量エンジンのエンジン特性をスーチャーできれいにまとめつつ、それに見合ったシャシー性能で受け止めて、上手に手なずけているということだ。CTSシリーズのもともとのボディやシャシーのポテンシャルが高いということでもある。
高速域でも“かなり硬い”と感じるスポーツモードを諦めて、高速道路を走った。ツーリングモードでも十分に足腰は強い。スポーツはサーキットドライブにこそ、お似合いだ。感覚的には欧州Dセグメントより一回り大きいクルマに乗っているかのよう。ノーズに重量を感じることと、ステアリングフィールが意外と軽めだからかも知れない。
黒基調でまとめられた室内。レカロ製スポーツシートも採用される |
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