GTでスポーツ、ラグジュアリーでリアルスポーツ
6.2リッターV8スーパーチャージャーエンジン(LS9型)に6MTを組み合わせる。0-60マイル(約96km/h)加速はZ06より0.3秒速い3.4秒とされる |
20インチのスピードスターホイール、プレクシ窓の空いたカーボン製エンジンフード、カーボンリップにカーボンステップ。ルーフもルーフボウもカーボンだ。リアには控えめながらスポイラーも見える。隣に並んだZ06が、ノーマル仕様に思えた。ZR1出現前は、Z06でもノーマルより数倍、迫力あると思えたにも関わらず。
シャシーとボディの構造は、Z06と同じ。すなわちアルミニウムとマグネシウム、カーボンを使った軽量で強固な骨格。
1エンジン1マンで手組みされるスーパーチャージャー付6.2リッターV8LS9ユニットには、硬派にも新開発の6MTのみが組み合わされた。クラッチを踏み込んで、期待と不安のエンジンスタート!掛かった瞬間の迫力は、Z06より小さい?あれれ、どうして??
サウンドは確かに迫力だが、振動が少ない。エンジンマウントや重量増などが効いているのかも。もう1つ、'09モデルイヤーのコルベットから、インテリアが豪華になった。いかにも安っぽいダッシュボードがレザー張りに改められ、センターパネル周りの質感も向上。ちょっとラグジュアリーな雰囲気さえある。そういうことも意外に気分を左右するものだ。
メーターは370km/hも刻んでしまっているけれど!
クラッチペダルは順当な重さ。軽くはないが、死ぬほど重いというほどではない。Z06のそれよりも、頼もしい感じがする。シフトストロークも短めで、操作フィールもいい。このあたりもZ06より上。洗練されているし、スポーティだ。
久しぶりにおそるおそるクラッチを繋いだ。アクセルを踏み込まず、アイドルスタートがこの手の最新スーパーカーの基本(電子制御の大排気量モデルなら大丈夫。クラッチを消耗させないためにも有効だ)。
トン。スー。ぶろろろろろ。
アイドルスタートだから当然なんだけど、いともカンタンに走り出す。しかも動き出してすぐに分ったことだが、乗り心地がスーパーカークラス最良レベル。この時点でZ06との違いは明らか。とにかく、エンジンからの振動が7リッターに比べてかなり抑えられている。
はたと思い至った。スーパーチャージャーが効くまでは、これってノーマルと同じ単なる6.2リッターV8ってこと?それに手組みでピストンとか鍛造で精密度も高いからかえってスムースに回ってる?
試しにそのまま回転を上げずに走ってみると、まるでノーマルのように扱い易い。とてもオーバー600psには思えない。過去に乗ったどんな600psクラスよりも街乗りでフツウだ。これなら街乗りからロングドライブまで、何の気兼ねなく使えそう。80km/hで1500回転と、これまたノーマルと同じだから、回さなければ多分、燃費も変わらないはず。
GTカーとスポーツカー、ラグジュアリーとリアルスポーツ、その両方を高レベルで実現したかった、という開発エンジニアの言葉の、信じられない方がまずは証明されたようなものだ。
638psの走りは次ページで