多くの人が「中古車は車検が長く残っている物件が得」だと思っていることでしょう。確かにそれは間違っているとは言えないのですが、ちょっとクルマに詳しい人、具体的には、ユーザー車検を自分で通せる程度の知識のある方には、車検の残り少ない中古車をお勧めします。理由は大きく以下の3つです。
- 残車検の長さとクルマの整備状態は比例しないから
- 中古車購入後の整備は自分で判断して行った方がよいから
- やり方によっては支払う総額が少なくて済むから
そもそも車検とは、クルマの状態が国の定める基準内にあるかどうかを数年に一度検査する制度。この検査自体には、実は1500円前後の費用しかかかりません。ただし、同時に自賠責保険を更新し、重量税を納め、整備不良の箇所を整備する必要があるため、これらを合計した10万~20万円程度の費用が車検にかかると認識されているのです。
また車検期間内は整備しなくても大丈夫、という認識もあるようですがこれも大間違い。上記の検査はその時点でのクルマの状態を判別するだけなので、決して次の車検までの期間の安全を保証してはくれません。「残車検の長い中古車は重量税分がお得」くらいに考えたほうがよいでしょう。
一方で中古車の残車検を表す際に「検2年付」という表現を耳にすることも多いかと思います。「2年間有効な車検にかかる費用を全部含んでいる中古車なんだ」と誤解されがちですが、検2年付とは中古車業界特有の表現で「2年車検の通過に必要な整備費用を車両本体価格に含む」の意。つまり車検代行費用や登録代行費用はもちろん、自賠責保険料や重量税も、別途必要になります。
以前は車検前に法定24ヶ月点検整備を受ける義務があったので「車検通過に必要な整備」には一定の重みがあったのですが、平成7年の規制緩和により事後整備が許されるようになったため、現在では「検2年付」には「ユーザー車検代行」程度の意味しかないのです。つまりメリットは購入と車検が一度に済むということで、その後の整備はいずれにせよ必要だと考えたほうがよいのです(もちろん、良心的な販売店ではきちんと24ヶ月点検整備をしてくれますけどね)。
さて、そこで残車検の少ない物件に注目です。残期間の目安は3ヶ月以上半年未満くらいですかね。これを購入後、しばらくしてやってくる車検満了の前に改めて整備工場に持ち込み(心当たりがなければ近所の新車ディーラーに持っていけば大丈夫です)、24ヶ月点検を受けるのですよ。ポイントは乗っていて気になっている内容を伝え、その改善も依頼すること。「あと2年は乗るつもりなので、その期間に寿命がきそうな部品は積極的に交換して」なんて今後の意向を言い添えれば完璧。これで本当の意味での安心が手に入ります。
時間に余裕のない人はこのとき同時に、整備工場へ車検代行をお願いしてもいいのですが、半日時間を取れる人ならあくまで点検整備の依頼にとどめて、車検は整備後に自分で受けに行くことをお勧めします。そうすれば車検代行費用約2万円が浮くことになってさらにお得。車検場(運輸支局)に行って検査のラインを通すのも勉強にもなるし、面白いものですよ。
この方法を採ると、クルマ購入後半年程度の内に整備費用が基本料金で2~3万円程度、その後の車検費用が自賠責と重量税だけで7万円程度(2000ccクラスの場合)必要になりますが、これはその先2年間安心して愛車を維持するための必要経費と思えば決して高くはありません。購入したクルマを2年半所有するのだとしたら、結局は所有期間中にどこかで車検を通すわけで、実はこの方法の方がトータルでかかる維持費は少なくなる可能性もあります。
ということで、この記事を読んで興味をもたれた方は、ぜひ御一考ください。