一方のカングーは5速のMT。こちらのギアボックスはルノー製だ。日本仕様のカングーはリアゲートが2種類あるが、MTが用意されるのは、よりフランス車っぽい観音開きのダブルバックドアだけ。どういう人がMTを選ぶかを、ルノー・ジャポンはちゃんとわかっている。価格はATより約10万円安い194万2500円と、200万円を切る唯一のカングーになる。
ペダル配置はこちらも問題なしで、やっぱりヒール&トゥがしやすい。ただしクラッチはメガーヌよりずっと軽くて、つながりもいい意味でルーズ。つまり扱いやすい。シフトレバーは1速がやや遠いかなと感じるが、それ以外は文句なし。コンパクトカーらしからぬがっしりしたタッチは、トゥインゴやルーテシアなど、他の小型ルノーと共通するものだ。
MTで乗って初めてわかったのは、1.6リッターエンジンの粘り強さ。トップギア1000rpmからでも加速していける。やっぱりMT前提で開発されたエンジンなのだ。だからメガーヌに輪をかけて運転がラク。それでいて各ギアで引っ張れば、ATでは味わえないスポーティな気分にひたることができる。こちらも気分にあわせて2つの個性を使い分けられるクルマだった。
日本の道にはATが合っているという声をよく聞くが、はたしてそうだろうか。渋滞しそうな場面は公共交通機関にまかせ、クルマの良さを引き出せる時間と場所を選んで乗れば、MTでも全然不満がないどころか、むしろこちらがいいと思うはず。それにこうやって付き合うほうが、愛車にも地球にも負担をかけないですむ。なにがなんでもクルマ、が許される時代ではなくなっているわけだし。
そんな理屈っぽいことは抜きにしても、価格は安いし、燃費はいいし、これまで書いてきたように走りの世界がグッと広がるし、エンジンの力がダイレクトに路面に伝わる心地よさももちろんある。そして運転していると、メガーヌもカングーも、やっぱりこれが本来の姿だということを実感する。あなたがフランス車好きなら、試しておいて絶対に損はない。そんな2台だった。
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