輸入車/注目の輸入車試乗レポート

8代目のランエボはどう進化したのか? ランサーエボリューション8試乗(2ページ目)

ついに8代目へと進化を遂げたランサーエボリューションがリリースされた。シリーズ初の6速ミッションを手に入れ、海外輸出モデルとなったことで、今までとは少し違った進化の一面が見えた。

執筆者:河口 まなぶ

ハンドリングコースで試乗してみると、より先代からの進化が伺えた。まず何と言っても、操舵に対するクルマの動きが極めて自然にしつけられたことが新しい。

ランエボ7ではAYC+ACDによって、時には物理の法則を無視しているようにすら感じられる、信じられないほど高い運動性能を発揮したわけだが、一方でこのシステムは操作に対する違和感を生んでいたのも事実。例えば操舵に対して、クルマの動きは非常に素早く、それが逆に操舵以上にクルマが勝手に動いている感じがあった。

しかしこのモデルでは、そういった違和感が影を潜めており、操舵に対する分だけキッチリとクルマが動くように感じられるのである。もちろん、もともとの運動性能の高さは全く失われていないどころか、逆に高くなった感じさえするから、感覚としては何か実際よりもさらにコンパクトなクルマが高い一体感を持っているような感じすら受ける。この点においては、インプレッサと同等以上の自然な動きがある、ともいえる。

ただもちろん完璧なわけではない。比較的大きな操舵角が繰り返されるワインディングでこそ違和感は少ないが、高速巡航における車線変更や高速ワインディングなどでは、まだ若干の違和感もある。つまり高速で走行している時には、ある程度の浅い舵角ならば自然な感じが出せているものの、それ以上の舵角を与えた時に、急激に曲がっていく感じも否めないのである。しかし、これは難しい問題で、この点においても自然な感じを作り上げてしまうと、今度は逆にあまり曲がらないクルマという印象を与えかねない。その意味で今回のAYC+ACDのセッティングというのは大分苦労した上で導き出されたものだと思えた。

試乗を終えて感じたのは、改めてランサー・エボリューションというクルマは日本車に薄いといわれている「個性」という点を強く持っているのだなぁということ。最初は確かに、コンペティション・ベースの強引なモデルだったかもしれない。インプレッサWRXとの長年に渡るパワー競争も、最初のうちは子供のけんかのようにすら思えた。しかし、そうして互いに対抗心を燃やすうちに、どんどん日本車ならではといえる部分を築き上げてきたように思える。実際、アメリカなどでは、コンパクトなボディにハイパフォーマンスなターボ4WDという考え方すらなかっただけに、今ランエボとインプの2台は多いに受けているのだという。

昨年、トヨタとホンダは世界で初めて燃料電池車を市販して、この分野でJカーとしての立場を世界に知らしめたわけだが、その対極にあるランエボとインプという2台もまた、世界にJカーとしての立場を知らしめている2台のように思える。日本車が得意とすること、日本車らしい部分、そういったものが、ランエボには確実にある。そう考えると、この先の展開もまた、期待が持てるというものである。
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