エンジンを始動するときに必要な「スターターモーター」、燃料ポンプ/コンピューター/各種センサーなどから構成される「燃料供給装置」、混合気に火花を飛ばす「点火系」といった補器の作動には、電気を欠かすことができない。走行時にはランプ類やホーンなどの「保安機器」、エアコンやオーディオといった「快適装備」に電気を安定供給する必要もある。
このため、クルマにはバッテリーが搭載されている。が、蓄えておける電力(畜電量)には限りがあり、バッテリーの電力だけで走れる距離は自ずと限られる。そこで、畜電量を一定に保ちつつ電力の供給を安定させるためにエンジンの回転力を利用した発電が行われており、走行中は常に充電状態におかれているのだ。
ところが、バッテリーが完充電状態になると、行き場を失った電気エネルギーによってバッテリー液(電解液)が電気分解され、電解液中の「水分のみが減る」という現象が発生する。つまり、走れば走るほど液量が減少してくるわけ。で、それを放っておけば極板が露出する結果となり、性能が著しく低下してしまうのだ。
メンテナンスフリー化が進んだ近年、その液の補充が不要なバッテリーも増えているが、新車時に搭載されているバッテリーはたいてい補充が必要なタイプ。コンディションを維持するために定期的な点検・補充は欠かすことができないので注意したい。
ただし、液の補充を行なうときは専用の「補充液(蒸留水)」か「バッテリー強化剤」の類を使用することが肝心! 減少するのは「水分のみ」だからだ。さらに、クルマ用の12Vバッテリーは2Vの蓄電池を6個直列に接続した構造になっていて、内部は6個の独立した部屋(セルと呼ぶ)に分かれているため、液量や比重の点検・補充は6セル共均等に行う必要がある。
なお、元々バッテリーに注入されている液(電解液)は硫酸を蒸留水で薄めた「希硫酸」。つまり、様々な物質を侵す性質がある「劇薬」なわけ。特に布地に対しては強力で、ほんの1滴付着しただけでボロボロになって穴が開いてしまうので要注意! 液栓を外したり比重を測定するときは慎重に作業し、もしも手に付いたときはよく洗い流し、衣服に付着した疑いがあるときはただちに水洗いを!!
さて、そのバッテリーだが通常、エンジンルーム内(車種によってはトランクルーム内に設置されている)のフロントよりの左右どちらかの隅にセットされている。まずはボンネットを開け、バッテリーがどこにあるか確認したい。
●充電状態・液量の点検
1.バッテリー上面は常にきれいにしておく
バッテリーケースの上面が汚れていると自己放電が助長され、電圧低下を引き起こしやすくなる。もしも汚れていたらきれいに拭きとっておきたい。ただし、拭き取りに使用したウエスには希硫酸が染みこんでいる可能性大なため、他の用途への使用は控えたい。
2.インジケーターがあったら充電状態を確認
バッテリーにインジケーターが装着されていたなら、これを確認することで充電状態をチェックする。良否の判定規準はインジケーターの近くに表示されていおり、通常、中心部が青色に見えれば正常だ。
3.液量をチェックする
ケース側面に表示されている液面ラインを見て、液量の点検を行う。UPPERとLOWERラインの間に液面があれば正常だが、各セルの量がバラ付いていたり、1セルでもLOWERライン前後まで減っていたなら補充が必要だ。
4.レベルが見えないときは注入口から覗く
もしもケース側面から液面が透けて見えないときは、注入口の液詮を外して上部から覗いてチェックするとよい。極板より10mmくらい上に液面があればOKだが、極板すれすれだったり露出していたときはただちに補充を!
5.液口栓を取り外す
各セルにセットされている液口栓は、右回転にねじれば取り外すことができる。指かけがないときはコインを利用すれば外せる。なお、外した液栓はバッテリー上に逆さに置いておく。
6.バッテリー補充液を注入する
液を補充するときは、例え1つのセルのみであっても、各セル共液面が均等になるようUPPERラインまで注入しておく。
●ターミナル磨き
1.ターミナルの状態を確認する
次に、バッテリーターミナルの状態を確認する。緩んだり、腐食していると電気が流れにくくなるからで、多少でもガタ付くようなら確実に増し締めを。また、ターミナルポールの材質は鉛で、酸化被膜に覆われると艶が無くなって黒ずんでくる。もしもそんな状態になっていたら取り外して(ただし、外す場合はマイナス端子側空が原則!)磨いておきたい。
2.酸化していたら外して磨く
ターミナルを取り外したら、金属ブラシで端子の隅々までこすって表面の酸化被膜を削り落としてやる。そして、組み付けるときはターミナルポールの表面にグリスを塗布しておく。これはターミナルの腐食を防止策。カー用品店で売られている普通のグリスでOKだ。
3.接触面に注目!
ターミナルの内面も酸化物に覆われることで艶がなくなってしまっている。ここは金属ブラシでは磨けないため…
4.端子内面はサンドペーパーで磨く
サンドペーパーを用意し、4~5cm四方にカットして小指の太さくらいに巻いたものを押し込み、巻きが広がる方向に回すようにしながら前後に動かすことで研磨していく。
5.仕上げに接点復活材を塗布する
仕上げに接点復活剤をスプレーする。これでピカピカになり、通電効率も復活。電気の通りが確実によくなる。
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