このような数値からすると、エンジン内部の摩耗を極力減らすという観点からは、ガソリンエンジン用純正フィルターのろ過精度は、やや心もとないということになります。
ところが、世の中に出回っているフィルターの中には、ダストを素通りさせるものや、ろ紙の抵抗が大きすぎて、やはりバイパス回路を通過させてしまうものがあるといわれています。極端にいうとオイルフィルターを装着しなくてもエンジンを壊すことはありませんが、ここに落とし穴というか、ダミーフィルターの入り込む余地があるわけです。ろ過精度の悪いフィルターはボディブローのようにジワジワとエンジンを摩耗させていくでしょう。
今のところのフィルター選び
現在個人的に選んでいるフィルターを挙げてみます。これは、市場のフィルター全てをテストしたり、データを比較した上での選択ではありませんので、ベストチョイスとはいいませんし、今後変わる可能性があることをお断りしておきます。
スタンダードタイプ
純正同等かそれ以上の性能を持っていると思われるフィルターです。まず、これにはメーカー純正品が該当します。性能は素晴らしいわけではありませんが、信頼度はバツグンです。もう一つ、カーショップで入手しやすいタイプでは、フィレックスというのを使っています。このフィルター、あんまり売っているところがなく、東京近郊ではドライバースタンドにしかありませんが、内部構造は純正と全く同一です。一部のガソリンスタンドでも同じ製品がありますが、ブランドはそれぞれのスタンド名が印刷されているようです。
高性能タイプ
高級なオイルを使っている場合や、特に大切なエンジンに使うフィルターです。主に、ろ過精度を重視しますが、ろ紙単体のろ過性能が高いだけではオイルが流れる時の抵抗が大きくなり、結果としてバイパス回路へ流れたり、オイルポンプなどへの負担も大きくなります。これは、花粉用の目の細かいマスクをした時と似ています。息が苦しいからとマスクを浮かせてしまっては効果が半減しますが、これと同じことがオイルフィルター内でも起こります。
ろ過精度とろ過抵抗は相反しやすい要素ですが、これを両立させたフィルターの一つにフラムのX2というのがあります(取り扱い:和興産業 TEL044-853-2220)。
これは、ろ紙にトライアドファイバーという特殊形状の繊維を使っているもので、繊維の一つ一つにダストを取り込む機能があります。このため、目を細かくしなくてもダストの捕捉性能に優れていて、ろ過効率は、30ミクロンで95%、20ミクロンでも85%、10ミクロンでも50%以上という高性能ぶりです。これだけの性能を持ちながら、交換時期は1万2000キロというロングライフを達成しています。
難点は、取り扱い店が少ないこと。価格が高い(4000円)ことでしょうか。
アメリカでのフィルター事情
アメリカ・ロサンゼルスのカーショップをのぞいて見たところ、フィルターのバリエーションが多くて驚きました。あるショップでは、全てフラム社の製品でしたが4種類もあるのです。エンジンオイルを選ぶような感覚で、スタンダードからロングライフ、スポーツ色の濃いものという具合に、ユーザーの指向で選べるようになっていました。
日本では製造元が同じでも、スポーツフィルターとなると価格を高く設定するためか別ブランドとして売り出されることが多いですし、製品ごとのキャラクターをここまで明確に区分していませんが、アメリカ製品のように低価格($8~12程度。ハイパフォーマンス用でとりわけ高価なものでも$20以下)で選択できると良いのになあとうらやましく思いました。
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