文章 : 高山則政(All About Japan「カーメンテナンス」旧ガイド)
日本でも年ごとに、1台のクルマをより長く使う傾向が出てきていますが、エンジンについていうとメーカー指定のメンテナンスを行っていれば、20万キロ程度は軽く持つとされているようです。メーカー保証でも主要部品に関しては5年10万キロという基準が設けられています。ただしこの定義は、目立った故障をしないということであって、使い方やメンテナンスの仕方によってエンジン音やパワーの差などが出てくることもあります。
エンジン消耗は少しづつ発生する
エンジンも機械の一つなので、使っているうちに微妙な摩耗が起こって来ます。摩耗を引き起こす要因は軸受けなどの潤滑に関わる部分での油膜切れだけでなく、シリンダーに入る燃料や燃焼後に生成される腐食性のガスが金属を侵すという化学的プロセスによって引き起こされる場合もあります。
このような摩耗をできるだけ減らすには、当然のことながら、オイルのメンテナンスをキチンと行うことです。この点については、週末のカーショップのピットがオイル交換車だらけになっていることからも、「ああ日本人て、オイル替えるのが好きなんだな」というのが良く分かります。5000キロごとなんて普通で、3000キロとか1000キロという極端に短距離で交換してしまう人も珍しくないようです。
ミクロン級ダストがエンジンを摩耗させる
しかし、(以前にも取り上げたことがありますが)オイルフィルターにこだわっている人というのは、あまりいないように思います。エンジン摩耗には、オイル中のダスト(ゴミ)が大きく関わってきます。エンジンオイルには、エンジンの部品が摩耗してできた細かい金属粉や、燃焼で発生するススやスラッジのような生成物、あるいは外部から入ってきたゴミなどが運転中に少しずつに混ざってきます。このざらざらのオイルがエンジン内を循環し軸受け部などに挟まれると、紙ヤスリのような作用を起こしてしまいます。
では、どのくらいのダストが悪影響を与えるのか?つまりどのくらいオイルがキレイだと良いのかというと、理想的にはオイル中に混じっているダストの大きさが小さければ小さいほど良いようです。要するに、ゴミなどはない方が良いのは当たり前なのですが、これを実現するにはエンジン回転中に新しいオイルに交換しながら走るくらいでないと不可能です。オイル交換を頻繁にやれば、ダストの量は少なくて済みますが、それだけで安心とは言えません。ダストは絶えず発生しているからです。
特に悪影響があるのは、40ミクロン(1ミクロン=1/1000ミリメートル)程度までの粒子で、軸受けの減りに大きな影響を与えるようです。さらに、より小さい20ミクロンあたりでもピストンリングなどの減りを促進させるようです。
フィルターはどの程度の性能か?
フィルターがどのくらいのろ過性能を持っているかを示すのに、「ろ過精度が○○ミクロン」という言い方をしますが、純正フィルターの場合、ガソリンエンジン用で30ミクロン程度までのろ過精度があるようです。ただし、30ミクロンだったら全て捕捉するのではなく半分程度は流れてしまい、それより大きい40ミクロンでも6割ぐらいの捕捉というのが現状のようです。
ディーゼルエンジン用では燃焼ガスにススが多く含まれ、摩耗に大きな影響を与えるため、ろ過精度を上げる必要があります。フィルターはバイパス式や複数フィルターを装着することで、5ミクロン程度に設定されているようです。