文章 : 高山則政(All About Japan「カーメンテナンス」旧ガイド)

エンジンの冷却水が吸収した熱を大気に放熱するのがラジエーターですが、そこにはラジエータキャップと呼ばれるフタが付いています。これは、単に冷却水の漏れを防ぐためのフタというよりも、冷却システムの圧力を調整する働きがあります。古くなってくると機能が低下する場合もあるので、点検のポイントを知っておきましょう。

圧力調整をするラジエータキャップ
 エンジンは燃料と空気を内部で燃焼させることで出力を生み出していますが、そこで発生する熱を何もしないでおくと高温になりすぎて、内部のメカが焼き付いてしまいます。そこで、空気や液体(水)を使って適度な温度になるように冷却しています。クルマでは冷却水をエンジンに循環させ、エンジンルームの前方にあるラジエーターで大気に放熱するようになっています。
 ラジエーターの上には、ラジエータキャップという金属のキャップが付いています。他のオイルやウォッシャー液のような液体を入れるタンクにもフタは付いていて、内容物が漏れたり異物が入るのを防止していますが、ラジエータキャップにはそれ以外にも重要な役割があります。
 それは、冷却システム内の圧力を調整しているということです。

沸点を上げる冷却方式
 この方式は加圧式と呼ばれ、冷却システム内に0.9~1.1kg平方センチ程度の圧力が掛かるようにラジエターキャップで調整するものですが、沸点を高くできるので冷却効率を高くできるという特徴があります。誰でも水は100℃(実際には98℃くらい)で沸騰して、それ以上に温度は上がらないことは知っていると思いますが、クルマの場合だと120℃近くまで沸点を上げて使うようになっています。圧力鍋を使うと早く調理ができることや、登山で高地に行くと半煮えになってしまうことからも圧力と沸点の関係が何となく分かると思いますが、水面に掛かる圧力が、沸点に影響するというわけです。

100℃はオーバーヒートではない?
 日本車の水温計ではHとLと適当な目盛りがあるだけで、実際の水温が何度かは分かりにくいものが多いのですが、後付けのメーターを装着して温度を測ってみると、通常は80~95℃くらい。負荷の高いときには100℃を超える場合があります。さすがに115℃以上では危険だと思いますが、105℃程度なら驚くようなことはありません。正常に機能している冷却系統ならば、沸点のマージンは確保されているからです。
 話は横道にそれますが、とあるエンジニアが「正確な温度を表示すると、ユーザーが不安になったり、トラブルではないかとクレームをつけたりする場合があるので、数字は表示しない」というのを聞いたことがあります。正確な状況を知りたいユーザーとしては、バカにされているような気がしてしまいますが、そんなこともありそうだなと納得させられるのも事実です。この点、ヨーロッパ車では高級スポーツカーでなくてもデジタル表示するクルマがあります。

外部から冷却水を戻す機能もある
 ラジエータキャップは単に加圧するだけでなく、リザーバータンクとの連携が取れるようにしてあります。冷却水はラジエーターと細いホースで接続されたリザーバータンクにも入っていて、冷却水の頻繁な補充を不要にしています。ラジエーター内に満タンになっている冷却水は、エンジンを掛けると温度上昇とともに体積が増えてきます。設定圧力になるとリザーバータンクへ流れ出ていきますが、逆に温度が下がると体積が減少して圧力が低下するので、それに引っ張られてリザーバータンクからラジエーター側に冷却水が戻っていきます。この時は、負圧弁という中心側の弁が圧力弁とは逆方向に作動するようになっています。