モータースポーツ/その他のモータースポーツ関連情報

レース業界は終わってしまうのか?(3)(5ページ目)

「冬の時代」を迎えているモータースポーツ業界の現状と今後の展望をご紹介する特集記事もいよいよ最終回。レース界に本当に明るい未来が待っているのか検証しながら、ガイドが感じる改善点を綴る。

辻野 ヒロシ

執筆者:辻野 ヒロシ

モータースポーツガイド

あらゆる分野での世代交代が急務

レース界の高齢化は何も選手だけではない。チームスタッフもレースを支えるオフィシャルも若者が減り、特にレースオフィシャルに関しては人手不足が深刻になっている。昔は人伝いに紹介を受けオフィシャルは集まったものだが、最近は一般からも募集をせざるを得ない状況だ。一般募集でレースファンからオフィシャルになったはいいが、休日を使った厳しい活動やレースを観戦できない自由度の無さからか、あっという間に辞めて行く人も多いと聞く。しかし、中には情熱を持ってレース界に飛び込んでくる人もいるわけで、レース界は若いからといって、その情熱を軽く見てはならない。若者はレース界の常識を覆すかもしれない斬新なアイディアと感性を持っているはずなのだ。
ヨーロッパのレースオフィシャルもかなり高齢化が進んでいる!?
ジャーナリストやカメラマン、我々のようなアナウンサーもそうだが、レースを伝える側にも20代の人材は非常に少ない。例えミッション車を運転したことがない、バイクに乗ったことがなくても、いいではないか。今のレース界には既存の発想に捉われない新しい感覚や感性を持った若い人材が必要であると感じる。人を引き付けるブログをかける若者、芸術的なカラーリングデザインを考えられる若者、CGアニメーションを作れる若者など何かに秀でた若者はたくさん居るはずで、その感性のままにレースを演出しても良いのではないかと思う。

しかし、待っていてもクルマやレースに興味が無いのだから、彼らは自分たちからやってはこない。レース界から若者に扉を開け、入場を押しつけるのではなく、来るまで待ち、優秀な若者には好きなようにやれるよう任せる。それくらいのことをして、若い世代に独自のカーライフ、バイクライフを描いてもらわなければ、それこそ全て終わってしまうと感じる。一度、レース界から若いブレーンを募集してみてはどうだろうか?

歴史と伝統、そして新しいもの

日本に初の本格的サーキット「鈴鹿サーキット」が誕生して、あと数年で50年を迎えようとしている。日本のレースの歴史を振り返ってみると、その中で景気や社会の風潮に左右されながらレース界は栄枯盛衰を繰り返してきた。日本には自動車産業という基幹産業があり、レース界の停滞時にも経済が成長を続けていたからこそ、盛り返すことができたのかもしれない。自動車の文化、バイクの文化が失われつつある今、再興は期待できないだろうか?

今、再興する確証はどこにもないが、灯を消さないことは必要だ。束の間の好景気でレース界にはたくさんの人がやってきたし(私もその一人)、中にはよく分からない怪しいビジネスをしかけに来た人も居る。レース界にあやかろうとした人も来年は潮が引いたようにサーッと引いて行くかもしれない。でも、世代交代は必要だが、レース界に多大なる貢献をしてきた偉大な人物も一緒に引いて行ったらそれは困りものだ。
日本にはもっと「ホンダコレクションホール」のようなレーシングカーを展示する博物館が必要。名勝負を演出したレーシングカーは残すべきなのだが・・・日本の税法上、売却せずに産業廃棄物にしてしまうことがほとんどだそうだ。
残念なことに、日本のレース界にはデータブック的な資料が充実していない。例え印象に残らなかった1年でも、レースは行われているわけで、選手やチームはそのキャリアを積み重ねているのだ。各カテゴリーごとに誰が過去に何回勝って、どんなレースをしたか、一目で分かるものが必要で、それを後の時代に残していかないといけない。例え冬の時代でもモータースポーツを応援しようとする人たちが居たとする、その人たちがパッと見て分かるデータが必要で、レースのプロモーターは正しいデータを作成し配布するべきだ。そういう小さな努力の積み重ねが再興につながるのではないだろうか?「分かっている人が正しく伝えればそれでいい」そんな姿勢では単なる閉鎖的な集団で、世間から理解されることもなく、本当に全て終わってしまうかもしれない。
アメリカのインディカーではレースメディアにデータブックが配布される。年に1度しかレースを取材しないメ地元ディアもこれを見れば正しいデータに基づいた記事が書ける。非常にオープンな取材環境が存在し、同時に多くのメディアでレースが報じられる環境がある。
日本にはモータースポーツ文化がない。よく言われるが、そうだろうか?ヨーロッパやアメリカとは形態も大きさも違うが、日本にも小さいけれど確実に文化的なものは存在するのだ。でなければレース業界はとっくの昔に終わっていたはずである。日本にはモータースポーツ文化がないという意見は単にモータースポーツがヨーロッパやアメリカのように生活の中に根付いている環境を羨ましく思っているだけのことではないか?世間にもっと理解して欲しいと思うなら、扉を開いて、情報を準備して、世間にメッセージを発信し続けなければならないだろう。




3回に渡ってお届けしてきた「レース業界は終わってしまうのか?」の記事はここで終了です。若輩者の独り言ですが、最後まで読んで頂いてありがとうございました。シーズンオフも明るい話題をたくさんお届けできるように頑張ります。来シーズンのモータースポーツ界、レース界の頑張りをお見逃しなく!

【関連記事】
レース業界は終わってしまうのか?(1)
(海外レース編)

レース業界は終わってしまうのか?(2)
(国内レース編)


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