レース界の未来を考える

レース業界は終わってしまうのか?

「冬の時代」を迎えているモータースポーツ業界の現状と今後の展望をご紹介する特集記事「レース業界は終わってしまうのか?」を3回シリーズでお届けしている。第1回ではF1やMotoGPなど世界選手権クラスのレースについて、第2回ではSUPER GTや全日本ロードレースなどの国内レースの現状をお伝えしてきた。今回は最終回ということで、レース界に本当に明るい未来が待っているのか検証しながら、ガイドが感じる改善点を綴っていきたい。

僕はAll About「モータースポーツ」では極力マイナスなトピックスや問題提起は避けてきた。時には軽く皮肉ったりしたこともあるが、ガイド記事はあくまでレース界への入口になればよいというスタンスで書いている。マニアが好む裏ネタやドギツイ批判を記事に盛り込んだ方が格段にアクセス数は増えるはずだが、マイナスネタを好む人たちと盛りあがったところで何らレース界の利益にはならないと僕は考えている。本当はシーズンオフも楽しい話や興味深い話をたくさん提供したいところだが、今年なかりは残念ながら明るい話題が非常に少ない。現状を何とかせねばという思いから、今のレース界を冷静に見つめ、未来像を探り、あえてマイナスなことも書こうと思った次第だ。

レース業界に明るい未来は待っているか?

窮地に陥っているサーキット経営

僕はサーキットで実況アナウンサーとしても仕事をしているが、周りの人間からは「そんなに毎週レースがあるのか?」と驚かれる。事実レースがあるからアナウンサーを職業にできているわけだが、世間一般の認識としては信じられないだろう。それもそのはず、新聞ではレースの結果の扱いなど本当に小さく、地上波のテレビ中継が「F1」しか行われていない今ではそう思われても仕方がない。
F1グランプリは10万人以上の観客を集める。

サーキットでは実際にプロからアマチュアまで毎週のように大小様々なレースが開催されている。鈴鹿のような大きなコースではコースを2つに分けて、二輪と四輪のアマチュアレースを同時に開催することもある。アマチュアレースはレースチケットも販売されず1000円から2000円程度の入場料だけで観戦可能だが、そういったレースを見に来る観客はごく僅かで、友人や家族が大半を占める、言ってしまえば「運動会的」なノリだ。

では、何で儲けているのか?アマチュアレースに参加するためにレース参加者は参加料(エントリーフィー)を支払う。この参加料でレースを支えるオフィシャル(競技スタッフ)などに支給する交通費やギャランティーをまかなっている。しかし、これだけでは到底利益にならない。サーキットの主な収入源は参加者がレースに向けて練習する時に利用する「スポーツ走行」枠の走行料である。サーキットとしては参加者にたくさん練習走行をしてもらいたいわけだ。アマチュアレースの開催自体は儲からないが、その練習走行で儲けるという構図である。けれども、アマチュアレースの参加者は年々減少を続けており、走行料の収入も当然のことながら減り続けている。
平日に行われている二輪のスポーツ走行
レースでない限り、コースに配置するスタッフは最小限で済む。
では、「SUPER GT」などの興行型レースはどうかというと、こういったレースはお客さんがどれだけ入り、何枚の高額なチケットが売れるかが収入を左右する。まず、レース開催にあたり、主催者であるサーキットはレースの統括団体(プロモーター)に「開催権料」を支払う。その値段は表には出てこないが、要はレースチケットの売り上げが開催権料とスタッフのギャラなどの必要経費を上回れば、レース開催は黒字になる。

それなら、興行型レースをたくさんやればよいではないかという話だが、実際にサーキットとして利益が出るのは確実に3万人程度集められる「SUPER GT」くらいで他のレースは開催すればするほど赤字になるそうだ。赤字を大きくしたくないものだから、主催者のサーキットは広告宣伝を行いお客さん集めをするが、プロモーションがどうしても主催者(サーキット)任せになってしまっている。これでは同じシリーズのレースなのに開催サーキットによってプロモーション度合いに温度差が生じ、レース開催が告知されるのも結局その開催地域に限定されてしまう。本当は統括団体がもっと積極的に全国的なプロモーションをすべきなのだ。
SUPER GTには大勢の観客が集まる。
少し話が逸れた。話をサーキットに戻そう。では、儲からない興行型レースをなぜやるのか?例えチケット収入で儲からない構造だとしても、かつては参加チームがコースを貸し切ってテストをする、いわゆる「占有走行」が年に何度も行われ、サーキットには旨みがあった。「占有走行」は何台走ろうが雨で走行を中止しようが関係なく料金が発生するので、サーキットにとっては非常に利益率が高く、大きな収入源であったが、テスト走行を減らしてコストを削減しようする興行型レースの流れの中にあってはその旨みも無くなってしまっている。儲かるレースは別として、このままだと興行型レースの開催はただのお荷物になってしまいかねない。(もうすでにお荷物なのだろうが・・・)