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レース業界は終わってしまうのか?(2)

3回シリーズで「冬の時代」を迎えているモータースポーツ業界の現状と今後の展望をご紹介している。今回は「SUPER GT」「全日本ロードレース」などの国内レースに注目し、未来への展望をお届けする。

辻野 ヒロシ

執筆者:辻野 ヒロシ

モータースポーツガイド

国内レース業界を何とかせねば

3回シリーズで「冬の時代」を迎えているモータースポーツ業界の現状と今後の展望をご紹介している。前回の「レース業界は終わってしまうのか(1)」ではF1やMotoGPなど世界選手権クラスのレースについて解説した。前回でも述べたように、モータースポーツが文化として根付いている国の自動車メーカーはこの不況下でもレース活動を何らかの形で続けようとしている。中にはF1の「メルセデス」のように今がチャンスとばかりに体制を強化し始めたメーカーもある。

しかし、国内に目を向けてみると日本の自動車メーカーはF1などのレース活動からアッサリと撤退し、その資金を環境技術の開発などに回そうとしている。F1を辞めて浮いた分を国内レースに使って欲しいところだが、自動車メーカーは「ノー」と言う答えを出すに違いない。

それもそのはず。速いクルマやバイクに興味がある、数々の名勝負を繰り広げてきた選手を若手が打ち破ることに興味がある、遠方にあるサーキットにクルマで出かけて非日常を味わいたい、などの思いを持った人が年々減り続けている今の状態では、自動車メーカーが国内のレース活動に積極的にならないのは当然のこと。自動車メーカーに頼りきっていたツケが回って、国内レース界は今や理想を追い求めることなど到底できない状態に陥っているのだ。何とかせねば。

第2回の今回は国内レースの現状を解説しながら、今後の展望をご紹介していこう。(情報は2009年11月24日現在のもの)

SUPER GT : 全員で努力し、華やかさをキープ

SUPER GT
国内屈指の人気シリーズ「SUPER GT」。GT500とGT300合わせて40台近くのエントリーがあり、20近くの車種が参加し、クーペもいればスポーツセダンもいる、スーパーカーもいれば大衆車もいる、ミッドシップもいればAWD(全輪駆動)もいる、そして6つのタイヤメーカーが争っている。世界中を探してもこんな「トンデモナイ、アメージングな」レースはどこにもない。こんなレースが見れる我々は本当に幸せなのだ。「SUPER GT」は日本のレース史上、最も華やかなレースシリーズであることは誰もが認めるところだろう。しかしながら、そんな華やかな「SUPER GT」も今年は不況の影響で「耐える」1年を過ごすことになった。

今年の「SUPER GT」では、チームの活動予算を削減するためにシーズン中のプライベートテストを禁止した他、金曜日の恒例行事だった「テスト走行」を中止。レースウィークは土曜日にフリー走行、予選を行い、日曜日は決勝レースの2日間開催にしてスタッフの宿泊費や消耗品代を削減した。さらに伝統の鈴鹿1000kmを700kmに短縮、シリーズ唯一の500kmレースだったゴールデンウィークの富士ラウンドも400kmに短縮し、チームにかかる負担をできる限り減らし、盛況なエントリー台数をキープすることに成功した。これに関しては素晴らしいハンドリングだったと思う。

そして、ファンの目線に立ち、分かりづらかったウェイトハンデ制度を明快なものにし、さらに最終戦は緊迫感あふれるウェイトハンデ無しのガチンコ勝負のレースにするなど、削減の代わりにファンのための演出を考えて、レースを最終戦まで見逃せないものに仕立てた。
速いマシンの勲章でもある重量ハンデ。今年は獲得ポイントに応じたウェイトを積み続けるルールになり、ウェイトの軽減もなくなった。そのためウェイトを降ろすためにわざとスローダウンして順位を下げるといった、ファンが理解に苦しむ行為もなくなった。
またレース初心者にも分かりやすく構成されたテレビ番組『激走GT』(テレビ東京系)の効果もあってか子供連れのファン獲得に成功し、サーキットには以前よりも年齢層の若いファミリーファンが増えた印象である。入場者数は昨年に比べると減少したが、それでも3万人近い動員があり、華やかさはある程度キープすることができた。これは「SUPER GT」に関わる人々の情熱の賜物だと思うし、何よりファンの高い関心に後押しされたものだろう。しかし、来年はどうだろうか?

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