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レースではどれぐらいのアライメントで走っている? 松田秀士が質問に答えます2

レースではすごく低い車高で走っていますが、ダンパーとトー角のレース活動での常識的な数字というのはいくらなのでしょうか?

執筆者:松田 秀士


質問
ダンパーとトー角のレース活動での常識的な数字というのはいくらなのでしょうか?

松田秀士の回答

この質問に僕はどう答えればよいのでしょう?
んー…、

まずダンパーの常識的な数字というけど、ダンパーの何のことかな?減衰力は、メーカーによってもチームによってもそれぞれ独自のセッティングを施していて、グラフでデータは見せてもらいますが、常識的な数字というのはないよね。

マシンによっても、タイヤメーカーによってもそれぞれ違う特性を持っているから、それに合わせてセットアップするものなんですね。で、トー角も同じようなことが言えるんだ。トー角とは、マシンを真上から見た時に、左右のタイヤが前後方向に平行だったら0°(スクエア)。

進行方向にハの字だったらトーイン、逆ハの字だったらトーアウト、と呼んでいます。セッティングの傾向としては、フロントをトーアウトにすると、アッカーマンと言うステアリングを切ったときに内輪の方が多く切れる特性の関係から、ごく初期の応答性が良くなると言われています。また、キャンバースラストという立場からもフロントタイヤの抵抗を減らす目的からもトーアウトは採用されます。

これは、今度はタイヤを前から見たとき、縦方向にハの字に左右のタイヤが傾いていることをネガティブキャンバーと言いますが、左右のタイヤが内側に傾いている分互いに内側に転がろうとして抵抗になるのを軽減するためにトーアウトにすることをキャンバースラストと呼ぶのです。

リヤタイヤの場合は常識的にはトーインをつけます。クルマは、ステアリングを切ることで先にフロントタイヤが路面と摩擦を起こしコーナーリングフォースが発生して切った方向にクルマが曲がり始めます。このとき、リアタイヤはそのものが操舵する機能を持っていないので、車体が曲がり始めてから路面との間に摩擦が発生してグリップが発生します。つまり、フロントとリヤとの間に位相遅れが発生して、リヤが滑りやすくなるオーバーステアーな傾向になることがあるのです(必ずしもそうとは言えませんが)。

そこで、リヤタイヤにトーインをつけておけば、直進状態でもリヤタイヤは路面との摩擦を起こしているわけで、ステアリングを切ってもすでにリヤタイヤはコーナーリングフォースを発生しているわけで位相遅れによるオーバーステアーは予防できることになります(理論上)。

ただ、これを付け過ぎると、リヤタイヤの磨耗が大きくなりますし、降雨時アクアプレーンを起こしやすくなります。レースでは、僕の経験値から言うと、フロントのトーアウトは30分以上付けたことはないし、リアのトーインは1度以上は付けた事はありません。

FFではアンダーステアー対策から、リヤをトーアウトにすることはあります。長くなってしまいましたが、サスペンションのセッティングはそれぞれのマシンに合ったセッティングをするので、常識的な数字というのはつかみ切れないのが現状です。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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