危機に瀕したモータースポーツ業界

世界的な不況、自動車業界の不振、F1における自動車メーカーの相次ぐ撤退など、今やモータースポーツ業界は暗いニュースばかりが次々に出てくる「冬の時代」を迎えている。モータースポーツファンであり、モータースポーツに関わる者としては現在の状況は残念極まりない。

どんな業界であっても「良い時代」もあれば「悪い時代」もある。また「良い時代」がやってくるだろうと信じたいが、モータースポーツ業界に大きく渦巻くマイナスのスパイラルは今度ばかりはそう簡単に止めようがないようだ。

しかし、このスパイラルを止めたいし、再び上昇気流を作りたいという思いはある。それはモータースポーツを愛する人たち全ての願いかもしれない。今回から3回に渡って、モータースポーツが現在置かれている状況を解説しながら、ガイドなりにモータースポーツが変わるべき所を論じてみたい。若輩者の意見ながら、3回分読んで頂ければ幸いです。

今回の第一回は世界選手権クラスのレースを中心に、来シーズンに向けた展望を含めて解説していく。(情報は2009年11月17日現在のもの)

F1:終わりを迎えた自動車メーカーの時代

撤退を決めたBMWザウバーのマシン
【写真提供:Bridgestone Motorsport】
ホンダ、BMW、トヨタが相次いで撤退を発表し、ルノーも撤退か継続かの最終検討に入るなど、F1世界選手権はひとつの時代が終わりを迎えようとしている。この10年の間に自動車メーカーが次々とF1へ参入し、F1は自動車メーカーの戦いの場として隆盛を極めたが、その構図は不況の名の下にもろくも崩れ去った。

自動車メーカーが撤退を決めた理由はメーカーの業績不振だけではない。FIA前会長のスキャンダル、レギュレーションを巡る分裂騒動、ルノーが巻き起こしたクラッシュゲート事件など、ここ数年のF1はマイナスな事を出し過ぎてしまったこともメーカーの撤退を加速させてしまった。

またレースでは、メーカー間の争いが激化し、コストが高騰したせいで、非自動車メーカー系のプライベートチームの参加は難しくなり、必然的にメーカーだけでハッキリと順位がついてしまうようになった。チーム運営コストが年間数百億円に達しているにも関わらず、エンジン開発が凍結されるなど技術開発の場としての見返りが無くなったうえ、F1ではメーカーがアピールしたい環境技術の導入もほとんど取り入れられていないため、メーカーは高額なコストに見合う価値が得られないと判断し、F1からの撤退を始めた。

マニュファクチャラー(自動車メーカーチーム)の時代は終わったのである。F1もいよいよ危機的状況を迎えているのか?というと、そうでもない。F1は60年に渡る長い歴史の中でマニュファクチャラー隆盛の時代とプライベートチームが中心の時代を繰り返している。またひとつ波が変わっただけと見た方がよい。

2010年シーズンからは4チームのプライベートチームが新規で参入してくる。英国のF3チーム「マノー」、アメリカに拠点を置く「USF1」、GP2チームの「カンポス・メタ」、そしてマレーシア系チームで名門の名前を復活させる「ロータス」の4チームである。これらの新規参入組は「コスワース」のエンジンを使用し、純粋なプライベーターとしてF1を戦うことになるだろう。「コスワース」は2006年以来の復帰となり、2.4リッターV8エンジンの新規開発が許されているため、開発が凍結された既存のメーカーエンジンよりも優位に立つ可能性があり、今やプライベートチームからは引く手あまたの状態である。

仮に「ルノー」が撤退を決めるとF1に関わる自動車メーカーは「フェラーリ」と「メルセデス」の2つだけになる。そんな中、「メルセデス」は今年チャンピオンになった「ブラウンGP」を買収して「メルセデスGP」の名前でワークスチーム化することを発表した。これにより名門「マクラーレン」はメルセデスエンジンを使用するプライベートチームとなり、マニュファクチャラーは「フェラーリ」と「メルセデスGP」そして継続が決まれば「ルノー」の3チームだけになる。そしてその他のプライベートチームは、借用したエンジンでマニュファクチャラーに対抗するという構図になるわけだ。
シーズン開幕前のテストでスポンサーロゴもほとんど無いまま船出した「ブラウンGP」。しかし、大成功の1年を過ごし、来年からはメルセデスのワークスチームとなる。
【写真提供:Bridgestone Motorsport】

一時の華やかな時代は幕を閉じるが、F1は何がどう転んでも「フォーミュラワン」である。F1は新たな時代を突き進むだろう。