婚約指輪といえば、誰もが思い浮かべる、あの立て爪のダイヤモンド・リング。《ティファニー》が6本の立て爪でダイヤモンドを支えた指輪を完成させたのは、1886年のことでした。

その頃の指輪は、ダイヤモンドが台座に埋め込まれるように留められ、石の裏側や周囲が閉じられていたため、十分な光が通らずに石が暗く見えていました。ティファニーの立て爪は、この問題を画期的に解決。6本の細いプラチナの爪でダイヤモンドを高く掲げるようにセットし、側面を含むあらゆる面から光がたっぷりと入るように工夫。当時、新素材として注目されていたプラチナで、柔らかなシルバーではできなかった細く強靱な立て爪を実現したのです。

旧来の埋め込みタイプの留め方が“クローズド・セッティング”と呼ばれたのに対し、ティファニーに始まるこの留め方は“オープン・セッティング”と呼ばれます。石の側面や裏側が閉じられることなく、オープンになっているからです。この留め方ではダイヤモンドの透明度や色み、カットのよしあしがあらわになるため、オープン・セッティングが広まるにつれ、ダイヤモンドの品質はより厳しく吟味されるようになったといわれています。

《ティファニー》
「ルシダ ソリティア ダイヤモンド リング」
プラチナ/ダイヤモンド ¥500,000台~
photo: copyright Tiffany & Co.

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2000年に発表されたティファニーのヒット作「ルシダ」も、現代的なフォルムで仕立てられてはいますが、最小限のプラチナの爪で側面を大きく開けてダイヤモンドを留めているという点では、1886年のオープン・セッティングを正しく踏襲しているといってよいかもしれません。

さて、今回私が見つけた指輪は、1カラット強のダイヤモンドがはめ込まれたプラチナ製、内側には“T&CO”の刻印。非常によい状態で遺された、100年近く前のティファニーのエンゲージメント・リングです。東京のアンティーク・ジュエリー・ショップの片隅にそっと置かれていたこの指輪、次ページでその画像をご紹介しましょう。