IPPFの勉強会で学んだこと
このIPPFは世界第2位の規模を誇るNGOで、ユニセフの次に大規模な人権や国際保健公益活動をしています。ユニセフが守るのは子どもの人権ですが、IPPFが守るのは性や妊娠出産の権利と健康です。それはSRH(セクシャルリプロダクティブヘスル アンド ライツ)と呼ばれ、誰もが自分の性を大切にできる暮らしができ、意図しない望まない妊娠や安全でない中絶や出産から人々を守ろうという活動で、対象は生殖年齢にある、つまり二次性徴以後の男女の人権です。この5月、イギリスにあるIPPF本部のジル・グリア事務局長が、来日されました。私は勉強会に参加する機会をいただき、直接お会いすることができました。世界中の4万カ所以上のセクシャル・リプロダクティブヘスルの拠点クリニックのトップですから、世界中の政府と活動を展開する力を持つ、素晴らしい女性でした。
ジル事務局長は、「世界中で、今、若者に必要な性と生命の教育はどこの国もできていないというデータが出ました」とおっしゃいました。世界中でもいのちは性からしかつながらないのだから、次世代に自分のいのちも相手のいのちも尊重し、性感染症や望まぬ妊娠を避けることができる社会をつくるためには、プロフェッショナルが、日々最善を尽くしていることを学びました。
世界中では1時間に9000人の新しい命が産まれていますが、同じく1時間に60人の女性が妊娠や出産を理由に亡くなってしまいます。サハラ砂漠以南のアフリカやアフガニスタンなどの国々では、1分に1人の割合で、妊娠出産で女性が亡くなっているのです。
IPPF日本事務所でもある家族計画国際協力財団(ジョイセフ)は40年以上前から取り組んできた母子保健活動の中で、“出産で亡くなる母親をへらそう”という活動は世界中「ホワイトリボン運動」と呼ばれる活動になっておりワシントンDCのホワイトリボンアライアンスには130カ国以上の国が加盟しています。日本は世界で一番、うまれた赤ちゃんの死亡率が少なく、妊産婦死亡率も世界トップレベルで少ない国です。安全に産めるチャンス、元気に産まれるチャンス、生き続けるチャンス、選ぶチャンスを得ている日本人たちがそれを享受できない人たちのためにチャレンジしなくてどうするのでしょう。
リプロダクティブ・ヘルスを日本に広めた加藤シヅエさんも、当時の炭坑町で過酷な日々を送る日本女性を助けるためという思いが原動力であったと聞きます。
現在、母子保健で世界に誇る実績を持つこの日本に生まれてきた私たちが、ホワイトリボンバッチを胸につけ、自分のいのちが与えられている感謝を世界中の母子を救う活動で還元できたら、とても素敵だと思っています。
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