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産科医療補償制度ができた本当の理由は?(3ページ目)

水曜ドラマ「ギネ 産婦人科の女たち」原作者の岡井崇先生(昭和大学産婦人科学教室教授)に、作品への思いをお聞きしたインタビュー。テーマとなった産科医療補償制度は医療訴訟とつながりが深い制度です。

河合 蘭

執筆者:河合 蘭

妊娠・出産ガイド


河合 原因がわからないのに、発生すると医師の責任が問われるのは何故でしょうか。

岡井先生 一部には「胎盤が早期剥離を起こしているのに病院が気づかなくて帝王切開が遅れ重症の仮死で生まれた」など医療側が責任を問われてもしかたがないケースもあります。ですから裁判では、よく帝王切開の遅れが争点になります。もちろん早く帝王切開を行えば防げるケースもありますが、そのようなケースは多くありません。

アメリカでは、医師が裁判で不利にならないように考えるので、帝王切開が増えています。脳性麻痺になる可能性が少しでもあれば帝王切開をするのです。一例の脳性麻痺を防ぐために、何と2300件もの帝王切開が行われていると言われています。しかも脳性麻痺は、どんなに早く帝王切開をしても、妊娠中に原因が成立していれば防ぐことはできません。

河合 現代の医療で「防げる脳性麻痺」と「防げない脳性麻痺」があるということですね。その割合はどのようになりますか。

岡井先生 アメリカの統計では、7~8割は防げないとされています。残りは医療によって防げる余地がありますが、このすべてを防ぐためにはほとんどのお産を帝王切開にしなければならないでしょう。そんなこともできないので、現時点では本当に難しい病気だと言わざるを得ません。

でも、ひとつずつの事例を子細に検討すれば、「これをしていれば防げた」ということが見つかるかもしれないのです。わずかなケースにしか当てはまらなくても、脳性麻痺が防げる何かが見つかれば素晴らしいことです。今回の制度では、脳性麻痺が起きた原因を分析する委員会が立ち上がり、私は委員長を務めることになりました。そこでは上がってきたすべてのケースについて徹底的な分析をやっていこうと考えています。


>>「徹底的な分析」はとても大きな規模でおこなわれます。どんな仕組みでおこなわれるのでしょうか?>>
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